倉田真由美さん「子犬がいる暮らし」くらたまね~&らいふVol.32
犬を飼いたいなあ…。漫画家の倉田真由美さんが暮らしやお金の気になる話題を綴る本エッセイ。近年、犬や猫などペットの飼育数が人間の出生数を上回るというペットブーム。高齢者やシニア世代にとってその飼育には課題もありそうだが、ある日、思わぬ形で犬と暮らすことになり――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
子供の頃から犬が好き
先日、知人から子犬を数日預かる機会を得ました。
実家では、私が子どもの頃からずっと犬を飼っていました。高齢化した父母が犬の散歩に行けなくなる前に最後の犬が死に、それ以降は飼っていませんが、今は実家近くの妹家族が大型犬を一頭飼っています。時折帰省の際に会いに行き、かわいがるのを楽しみにしています。
犬を飼いたいなあ。
そう思うことはあっても、犬を飼うことのハードルはかなり高いです。
狭い家。私自身の不規則なスケジュール。犬がいる生活を想像すると、とても楽しそうなんだけどやっぱりぶつかる壁があり、そこを越える勇気はなかなか持てません。
でも、小さい犬を数日預かることなら可能です。知人からの「数日家を空けるから、預かってくれないかな」という申し出を、一も二もなく引き受けました。
やってきたのは生後4か月ほどのコーギーの女子です。体重は4キロちょっと、いつも買う5キロ米よりは軽いので、持ち運ぶこともできます。
「わあ、かわいいね」
彼女が到着した日、出迎えた娘は大喜び。覚束ない手つきで抱き上げました。
「じゃあ、4日後に迎えに来るね」
と、飼い主は旅に出ていきました。子犬はまだ幼く、飼い主と別れることに特に不安を感じている様子はありません。それよりも未知の家に興味津々のようです。
子犬との暮らし
「とりあえず、うちの中を見てもらおうか」
子犬を床に下ろすと、クンクンと匂いを嗅ぎながら歩き回ります。犬と一緒に預かったリュック型ペットキャリーをリビングの隅に置き、用意しておいたバスタオルを寝床としてキャリーの横に敷きました。とりあえず、リビングを子犬の居場所とし、トイレシートも2枚並べ、ここでするように言い聞かせました(伝わったかは不明)。
食事は3回、子犬用のペットフードです。非常に食欲が旺盛な子で皿に入れて出すと一気にガツガツと食べ、「食べなくて困る」という様子は一切ありません。
飼い主がいなくて見知らぬ場所であるにも関わらず、まったく物怖じせずぬいぐるみなどのおもちゃで遊んだり座っている人の膝に乗ってきたりします。それは大変かわいらしいんですが、困ったこともありました。ヒラヒラしたスカートや長いパンツを履いて歩くと裾をガジガジと噛んでくるのです。
「いや、これはちょっとダメだよ、やめてね」
と言っても、なかなかやめません。たまに布を貫通して足に歯が当たってしまうことがあり、「痛い!」と悲鳴をあげることもあります。子犬の歯は小さくて尖っているので、甘噛みでもちょっとした傷になったりもしました。
怒ると一旦やめますが、また興が乗ると噛んできます。私の服はスカートもパンツも大抵長いし、噛むものがなければ靴下も噛んでくるので、その度に「これはダメ!」と叱りました。
布だけではなく、気に入ったら家具もやられます。なぜか体重計のスイッチをしつこくガジガジしていたので叱ってやめさせました。その腹いせではないでしょうが、すぐ後に私の座椅子におしっこをされて、気づかず直後にそれを踏んだり、本当にてんやわんやです。犬はやっぱり世話も躾も大変だなあ、と改めて思い知らされました。
散歩もまた、イメージと違っていました。犬も当然、個体差があります。この子犬は、今までうちで飼ってきた犬たちとは異なる反応をしました。
歩いている途中で、いきなり座り込むんです。
散歩が嫌というわけではなさそうで、歩いていると楽しげです。でも、時折座り込む。
「ほら、行くよ」
と、紐を引くと大抵立ち上がって歩き出しますが、それでも動かない時は抱っこして移動します。4キロ強あるので度々だとまあまあ腰にきます。本犬のペースで歩いていても座り込むので、彼女の癖なのかもしれません。
それでも、公園などで嬉しそうにしている犬を見るのは至福です。犬に引かれて走ったりすると、普段まったく走るということをしていない身体には大きな負担ですが、犬の笑顔には従うしかありません。
「犬、飼いたいなあ」
子犬と接していると、ますますそういう気持ちは膨らみます。
しかし、大変なことは就寝してからも続きました…。(次回へ続く)
