「定年後働き始めた職場に気の合わない人がいる」仕事を続けようか悩む60代女性に毒蝮三太夫が授けたアドバイスとは?|「マムちゃんの毒入り相談室」第88回
対人関係に悩む人は多い。仕事は続けたいが、気が合わない人がいて職場に行くのが憂鬱だと訴える61歳の女性。我慢して仕事を続けるべきか、いっそ辞めて好きなことをしたほうがいいか悩んでいる。マムシさんは「気が合う人ばかりの職場なんてない。上手に距離を取って、何なら日々のアクセントにしてしまおう」と背中を叩く。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「気の合わない同僚がいて仕事に行くのが憂鬱で仕方ない」
いやあ、季節が移り変わるのはあっという間だね。暑い暑いって言ってたら、どんどん秋めいてきた。気が付くと冬になって、またすぐ春が来る。どんどん過ぎていくからこそ、一日一日を大切にしたいね。周りの人に感謝して、たくさん笑って、今の自分にできることをせいいっぱいやろうじゃないか。
10月5日には21回目の「マムちゃん寄席」がある。笑福亭鶴瓶ちゃんやらナイツやら春風亭一之輔やら、今回も豪華なゲストがたくさん来てくれるみたいだ。ありがたいことに、もうチケットは完売した。どんなステージになるのか、まあ、楽しみにしてくれ!
今回は、定年後に再就職した職場で、このまま仕事を続けるかどうか悩んでいる61歳の女性からの相談だ
「仕事を続けるか、辞めるか悩んでいます。
長く務めた仕事が定年でひと区切りになりました。年金がもらえる日までは仕事を続けようと決心して、しばらくして今の職場で働くようになったのですが、気の合わない同僚がいます。意地悪をされるわけではないのですが、いちいち癇に障るのです。またその人の顔を見るのかと思うと、仕事に行くのが憂鬱で仕方ありません。
この春に親しい友人が大病をした際、健康が一番大事だと実感し、やりたいことができるうちに新しいチャレンジをしたほうがいいのではないかと思いました。ただ、老後に備えて少しでもお金を貯めておきたい気持ちもあり、仕事を辞める勇気がなかなか出ません。この歳だと転職も簡単ではなさそうです。
毒蝮さんに相談することで、こんな中途半端な自分を変えるきっかけにしたくてメールしました。喝を入れていただけたら幸いです」
回答:「仕事は辞めないほうがいい。ヒマになったらつまらないよ」
相談を読んだ限りでは、顔を見たくない同僚はいるけど、どうしても会社に行けないほど苦しいわけじゃなさそうだ。「新しいチャレンジ」と書いてるけど、具体的にやりたいことはないってことかな。何としても働かないと生活に困るという気配も感じられない。
あなたが自分で言うように、たしかに中途半端だ。ただ、中途半端っていうのは悪いことじゃない。余力を残したまま、いろんな選択肢を選べるってことだからね。いわば恵まれた状態にあると言えるんじゃないかな。
結論から言うと、仕事は辞めないほうがいい。まだまだ元気が余ってるのに、仕事を辞めてヒマになったらきっとつまらないよ。この先の人生で何があるかわからないんだから、お金は少しでも多くあったほうがいいしね。毎日のんびり暮らしたいなんてのは、もっと歳を取ってからでもできるんだから、まだまだ慌てなくていい。
職場に気の合わない人がいて会社が憂鬱だっていうのは、よくわかる。ただ、気が合う人ばっかりの職場なんて、どこにもないよ。あなただって長く働いてきたんだから、そこはわかってるはずだ。しょせんは職場の付き合いなんだから、重く受け止める必要はない。適当に距離を取って、自分の中のその人の存在感を薄くしちゃえばいいんだよ。
だいたい、こっちが気に食わないと思っているときは、相手だってこっちのことを好ましくは思ってないのが常だ。どっちが悪いとか、そういう話じゃなくてね。人間関係がこじれると、自分だけが被害者みたいな気になるけど、相手も「なんだこいつ」と思っているなんてことはよくある。だから、距離を取るっていうのはお互いのためなんだ。
それに、職場にはひとりぐらい気が合わない人がいたほうが、アクセントがあって面白いよ。「よくまあそんなこと言えるなあ」と心の中で呆れたり、いかに上手に距離を取るか作戦を練ったり、ちょうどいい張り合いになるんじゃないか。思い詰めないで、明るくすり抜けよう。
自分の経験を振り返ってみると、嫌な人っていうのは、こっちの欠点を知っている人でもある。だからうっとうしく感じるけど、なんで嫌いなのかを直視することで、反省するきっかけになったり自分の成長に結びつけたりできる。最初は気に食わなかったヤツと、いつの間にか何でも言い合える仲になってたなんてことも何度かあった。
働ける健康な体と自分が役に立てる仕事があるっていうのは、当たり前じゃなくてありがたいことだ。気が合わない人がいるぐらいで辞めちゃうなんてもったいないよ。人間関係のままならなさを楽しんだりいい刺激にしたりして、図太く楽しくやってってくれ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。90歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。最新刊は玉袋筋太郎と熱く語り合った対談集『愛し、愛され。』(KADOKAWA)。毒蝮の「毒」と玉袋の「粋」が熱く融合し、混迷の時代を生きる私たちに勇気と希望を与えてくれる。
YouTubeの「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXXも、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。