【介護ポストセブン10周年特別企画】10年後の介護職を守るために知っておきたい2つのこと「ケアマネの本来の仕事を知っていますか?」【遠距離介護の達人が提案】
訪問介護事業所の倒産件数は過去3年連続で過去最多を更新している。今夏10週年を迎えた介護ポストセブンの開設当時から続く人気連載を執筆する遠距離介護のエキスパート・工藤広伸さんが「この先10年の介護」を考察。在宅介護の鍵となるケアマネジャーなどの介護職を守るために、今すぐできることとは?
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(83才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
10年後の介護保険制度や介護職はどうなる?
介護ポストセブン10周年、おめでとうございます! サイト開設の翌日から始まったわたしの連載『息子の遠距離介護サバイバル術』も、おかげさまで10周年を迎えられました。ここまで書き続けてこられたのは、介護ポストセブンという発信の場があったからであり、読者の皆さんに支えていただいたからです。ありがとうございます。
10周年特別企画となる今回のテーマは「10年後の介護」。
先日、全国のケアマネジャー約1500人が参加した講演会で、わたしの著書『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』(翔泳社)に書いた内容をお伝えしたところ、大きな反響があり「ぜひ他の家族さんにも伝えて欲しい」との声をいただきましたので、その話をしたいと思います。
介護の現場から見えてきた人材不足の現実
2026年8月末、母が利用していた訪問介護の契約が突然終了しました。ヘルパーさんの退職が相次ぎ、事業所が撤退を決めたためです。実はその1つ前に利用していた事業所も、同じ理由で事業から撤退しました。
わたしの母が暮らす岩手県盛岡市は、人口約28万人を抱える県庁所在地です。中核的な都市であり、他に訪問介護事業所もあるため、明日からヘルパーさんが来なくなる心配はありません。しかし、10年後も同じように、代わりを見つけられる保証はありません。
2020年に読売新聞が行った調査では、主要自治体の首長の約9割が「今後10年間、介護保険制度を維持するのは難しい」と回答しており、その理由として介護職の人材不足を挙げていました。
また、介護保険外サービス【利用実態調査】(介護のなかま調べ)によると「介護保険サービスだけでは対応が難しいニーズをふまえ、6割を超える人が「介護保険外サービス」の必要性を感じているという結果も。
→介護保険外サービス、未利用77%でも将来的必要性は61%【利用実態調査】
介護保険サービスの利用者は今後も増えていく一方で、介護職は不足していく。その結果、介護職1人あたりの負担が増え、サービスの質は低下する。その影響を受けるのは利用者本人だけでなく、介護している家族も同じです。
人材不足の理由として、他業種と比べて賃金が低い、離職率が高いなどとよく言われています。しかしわたしは、サービスを利用している家族側にも原因があると考えています。
介護の仕事に携わるプロのかたたちには「思っていても言いづらい」ことは多いのではないでしょうか。そんな本音を代弁したいと思い、2つの提案をしたいと思います。
提案1.ケアマネの本来の役割を知っていますか?
わたしたち家族が最も接点のある介護職といえば、ケアマネジャー(ケアマネ)ではないでしょうか。
2026年の介護労働安定センターの調査によると、ケアマネの平均年齢は介護職の中で最も高い55.1才。試験の受験者数は、受験資格の厳格化で大幅に減少しています。
こうした厳しい状況に加えて、介護の現場では「シャドーワーク」が問題になっています。これは、介護保険制度で定義されているケアマネの役割とは異なる支援を指し、報酬や評価の対象にならない「見えない仕事」のことです。
シャドーワークの実態は…
たとえば、行政手続きや金銭管理、病院への送迎など、本来は家族が担うべき役割をケアマネが代行し、他の重要な業務にあてる時間が奪われている実態があります。
そもそも家族がケアマネの業務範囲を理解していないため、何でも頼んでいいと勘違いし、こうしたシャドーワークを生んでしまいます。さらにケアマネも家族からの要望を断りきれずに引き受けてしまい、それが常態化しているケースも少なくありません。
ケアマネが家族に業務範囲を事細かに説明する機会はないですし、学校で教わるわけでもないので、家族自らが調べないかぎりわからないのが現状です。
ケアマネにお願いする前に、まずは自分で「介護保険で受けられるサービス、受けられないサービス」を検索してみてください。そして、受けられないサービスは依頼しないよう、心がけましょう。
提案2.ケアマネが担当している利用者の人数はどのくらい?
ケアマネ1人が、何人の利用者を担当しているかご存じですか?
平均44人と言われています。つまり、あなたの担当ケアマネは、他に43人もの利用者を同時に抱えているということです。自分だけの専属ケアマネではなく、44人すべてを支えるケアマネだということを、常に心に留めておいて欲しいのです。
本来の仕事以外のことを頼んだり、緊急性のない用件で連絡したりすれば、ケアマネの助けを待っている他の家族に影響が及びます。
必要なときにケアマネを頼るのは当然ですが、それでも節度をもちつつ、シャドーワークを避け、他の43人も意識しながら相談や依頼をするだけで、ケアマネの負担はずいぶん変わってくると思います。
10年後も介護のプロに力を借りるために…
介護職の人材不足が深刻化すれば、そのしわ寄せは巡り巡ってわたしたち家族にも返ってきます。
介護中の家族もいずれ、自らが介護を受ける立場になる可能性もあります。そのとき、必要な介護保険サービスが受けられなくなったとしたら、不安でたまらないと思います。
わたしは「介護は自分ひとりで抱えず、プロの力を借りましょう」と何度も記事で書いてきました。しかし、こうした現状を知ったうえで、最低限の知識や敬意をもって、家族はプロの力を借りるべきではないでしょうか。
介護職は「何でも屋」ではなく、「みんなの財産」です。貴重な介護職を大切にすることが、10年後の自分自身も守ることにもつながっていくと思います。
