介護施設で働く職員の負担を減らす取り組み・注目サービス3選「業務の効率化や支援に」【社会福祉士解説】
介護現場の人手不足は慢性化しており、2040年には約57万人の増員が必要という推計も。人出を確保し、人材の流出を防ぐため、介護現場の負担軽減は急務だ。政府は「介護テクノロジー導入支援事業」を実施し、補助金の引き上げなどを実施し、介護現場のテクノロジー化が進められている。最新事情を社会福祉士の渋澤和世さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
介護現場の負担軽減が必要な理由
介護現場の負担軽減がなぜ今、不可欠なのでしょうか? それは、職員の限界が利用者のケアの質や安全に直結するからです。過剰な業務負担は離職を招き、深刻な人手不足という悪循環を生み出します。負担軽減は単なる効率化ではなく、現場の笑顔を守り、持続可能なケアを提供するための土台となります。
負担が大きい業務の種類と課題
これまで介護現場で特に負担が大きいとされている代表的な業務には以下のようなものがあります。
手書きの手間と二重入力(記録業務)
ケア実績、申し送り、経過記録を紙に手書きし、さらにPCへ打ち直す作業などに膨大な時間をさいていました。
情報共有のタイムラグ
口頭や申し送りノートによる情報伝達では共有漏れが起きやすく、確認作業に追われていました。
夜間・定期の巡回と見守り
利用者の転倒や離床を防ぐため、夜間に何度も各部屋を回る必要があり、精神的・肉体的な負担が集中していました。
こうした課題に対し、介護現場ではICT(情報通信技術)や介護テクノロジー導入による業務効率化(DX化)が大きく進んでいます。かつて膨大な時間を要していた紙への手書き記録や転記作業は、タブレット端末や音声入力ソフトの活用により、その場で簡便に入力・共有できるようになりました。
また、見守りセンサーの導入で、異常時のみ通知を受け取れるようになり、夜間の定期巡回に伴う負担も大幅に軽減されています。さらにインカムの活用により、で離れた場所にいる職員同士の即時連携も可能になりました。
一部で操作への抵抗感や導入コストの課題は残るものの、単純作業は機械に任せ、職員は直接的なケアに集中する環境づくりは確実に進んでいます。
事例「サービス導入で改善された」現場の声
これまで負担だった業務が、新たなサービスにより負担が軽減された事例も。筆者がかかわった介護現場の声を紹介します。
デイサービスの事例「介護記録ソフト×音声入力で勤務時間の短縮に」
デイサービス勤務・介護主任(勤続6年)
これまでは夕方の送迎が終わった後、紙の連絡帳と業務日誌に手書きで同じ内容を書き写す作業が残っており、毎日1〜2時間の残業が当たり前でした。手書きの誤字脱字チェックや転記の二重作業も負担でした。
音声入力対応の介護ソフトを導入してからは、ケアの合間にスマホへ声を吹き込むだけで、正確な文章でリアルタイムに記録が完了します。連絡帳データも保護者用アプリへ一括送信されるため、転記の手間が完全にゼロになりました。
記録に縛られる時間がなくなったことで残業がほぼ無くなり、定時で帰れる日が増えました。利用者様との対話やレクリエーションの企画に時間を割けるようになり、仕事へのやりがいも一気に高まりました。
特別養護老人ホームの事例「見守りセンサー×インカムで夜間の業務がラクに」
特別養護老人ホームの介護職員(勤続3年)
以前は夜勤帯の定期巡回が大きな負担でした。転倒リスクのある利用者様の部屋を1〜2時間おきに回る必要があり、ドアの開閉音で目を覚まさせないか気を使う精神的ストレスも大きかったです。
見守りセンサーを導入してからは、起き上がりや離床の動きがスマホへ即座に通知されるため、無駄な巡回が激減しました。さらにインカムを連携させたことで「〇〇様が離床されたので向かいます」と夜勤スタッフ間で移動しながら声で連携でき、駆けつけのタイムロスもなくなりました。
不要な訪室が減ったことで利用者様の睡眠の質が上がり、夜間のナースコール自体が減少。スタッフも巡回に追われることがなくなり、精神的なゆとりを持って個別のケアに対応できるようになりました。
業務効率化に一役!注目サービス3選
介護現場の業務効率化をサポートする注目のサービスをピックアップ。
CAREKARTE(ケアカルテ)/ケアコネクトジャパン
介護・障害・看護向けのトータルクラウドシステムです。計画書・介護記録・請求業務を全般網羅し、iPad等のモバイル入力や各種センサー連携により現場のペーパーレスとDXを推進する。
https://www.carekarte.jp/carekarteabout/
【主なメリット】直感的なスマホ・タブレット入力によりで業務を効率化し、残業の軽減に。残業を削減し、センサー連携により夜間の見守り業務を効率化します。法改定時の対応のも追加費用も不要。ゼロで安心。蓄積したデータの活用でケア品質の向上と情報共有を促進。
【費用の目安】
初期費用と月額費用からなる体系で、2年目以降は保守費用のみで運用可能。事業種別や規模、連携オプションにより個別見積もりとなる。初期は数十数万円~、月額は数万円~が目安で、補助金を活用した導入例も多い。
介舟ファミリー/日本コンピュータコンサルタント
介護・障害福祉事業所向けのクラウド型業務支援ソフト。ケアプラン等の計画書作成から現場の介護記録、国保連請求・利用者請求までを一元管理でき、幅広いサービス種別に対応する。
https://kaisyuf.jp/
【主なメリット】利用者数や端末数が増えても追加料金がない定額制で、法改定時の対応も無料です。介護・障害・自費の請求を一元管理でき、シンプルな操作性と充実したサポート体制、違約金なしで安心して導入できるます。
【費用の目安】初期費用は22,000円〜55,000円。月額費用は居宅介護支援が8,800円〜、訪問やデイ等の介護・障害福祉サービスは簡易版5,500円〜、標準版16,500円〜で利用できる。
HitomeQ(ひとめく)ケアサポート/コニカミノルタ
コニカミノルタが提供する介護施設向けの見守り・業務支援システム。天井設置型の画像センサーが利用者の行動(離床・転倒等)を検知・分析し、スタッフのインカムやスマホへリアルタイムで通知される。
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/care-support/index.html
【主なメリット】入居者の転倒リスクの軽減に貢献するとともに、危険動作の早期発見やムダな訪室の削減により、特に夜間業務の負担を大幅に軽減。映像と音声で状況を確認してから駆けつけられるため、安全性の向上と迅速な対応を両立。記録やインカムとの連携で情報共有と業務効率化を支援する。
【費用の目安】導入形態は機器の一括購入方式と月額利用方式から選択できる。費用は施設の居室数やシステム構成、助成金の活用状況により大きく変動するため個別の見積もりが必要だが、月額利用方式の場合は居室あたり月額数千円~が導入目安となる。
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技術の進化により、日本の介護は耐える現場からテクノロジーで支え合う安心の場へと変わっています。介護職員は記録や見守りの負担が劇的に減り、心と時間にゆとりを持って本来の人間らしいケアに集中できます。
利用者も過剰な干渉を受けずプライバシーを守られながら、いざという時は素早く見守られる安心感を得られるようになります。テクノロジーが介護職員と利用者双方の笑顔と尊厳を守る未来になることを期待せずにはいられません。
