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兄がボケました~認知症と介護と老後と「 第24回 認知症の叔母に会ってきました」

 長年、認知症の兄と二人で暮らし、サポートを続けてきたライターのツガエマナミコさんが綴る日常エッセイ、今回は、入院中の叔母のお見舞いに行ってきたお話です。認知症を患う叔母がたどってきた経過を見て、これからの兄の姿を重ねてしまったようで…。

  * * *

後ろ髪を引かれて病室を出た後に聞いた話

 先日、認知症の叔母(82歳)が入院しているという知らせがあったので、お見舞いに行ってまいりました。日頃、お世話をしてくれているもう一人の叔母(85歳)と、その娘(私から見て従妹)に案内していただき、わたくしは9年振りの再開でございました。

 9年前にはすでに認知症が進んでおり、グループホームに入所しておりました。歩けてはいましたが、記憶が怪しく、姉に当たる叔母が行き来してくれている状況でございました。

 ここ数年、入院することが何度かあり、今回はお通じが出なくなって入院したとのことでした。お小水はあるけれど、大きな方が自力では出せないようでございます。

「もうそういう段階なのね」と経験上、大方の察しがつくようになり、ある程度の覚悟をしていったのですが、ベッドの中の叔母は顔色がよく、小さくはなっていましたがシワ枯れてはおらず、少女のように無垢なお肌で眠っておりました。面会は最大20分で、病室には一度に2人以上入れないルールなので、交代しながら顔を見てそのまま帰ろうと思っていたのですが、あるタイミングで看護師さまが水分補給をするために叔母を起こしてくれたので、目を開けた叔母にも会うことができました。

 もちろんこちらの顔を見ても誰だかわからなかったようですが、子どものようなキラキラした目でこちらを見て、ニコッとしてくれたので、とても幸せな気持ちになりました。

 とろみをつけた水を、ひと匙ひと匙、飲み込んだのを確認しながら飲ませてくれる看護師さまには感謝しかございません。そして叔母が口を開けてとろみ水をほおばるたびに歓喜するわたくし。その様子を見て「何?」という顔をする叔母がまた可愛くて、病室を去るときは後ろ髪を引かれる思いでございました。

 食べられるものはプリンやお豆腐のようなもので、すでに入院が1カ月半近くになるという叔母。従妹の話では、2カ月以上施設を離れると退所扱いになるので、近々退院するのだそう。病院にいれば点滴ができるけれど、施設ではそれはできないので、叔母が自力で水分を摂れなくなるとかなり厳しいという話も聞きました。

 でも、胃ろうなどの延命措置はしない方向で考えていて「あとは自然に任せよう」という意見にわたくしも賛成してまいりました。

 叔母は途中から車いすになり、だんだん弱り、入退院を繰り返すようになりました。わたくしは叔母の姿に兄を重ねて、「こういう経過をたどるのかもしれないな」と思いながら帰ってまいりました。

 従妹の話では、施設は人手不足で、叔母のペースに合わせて食事介助するのは難しいと言われているようでございます。「私や母ができるだけ行って食べさせてあげたいと思っているけれど…」と困惑ぎみでございました。思わず「うちに来てもらってもいいけど」と口走ってしまいましたが、よく考えれば住所が違えば行政が違いますし、今更主治医が変わる云々は無謀でございましょう。

 帰り際、3人でお茶をしながら、積もる話に花が咲きました。いつのまにか従妹が叔母のために奔走してくれる存在になっていたので安心いたしました。よく考えれば彼女もアラフィフですから年齢相応なのでございますが……。

 それにしても彼女がわたくしのことを「マナミコお姉ちゃん」と呼ぶたびにぞわっとするのは何でございましょう。「妹」としてのアイデンティティーが染みついているせいか、「お姉ちゃん」がまったく馴染まず、まるで入学式の制服のように不自然で気恥ずかしい、それでいてちょっと嬉しい複雑な感覚でございます。彼女はわたくし同様、独身なのでこれから母親の介護も必須。できる範囲でフォローしようと思っているマナミコ姉さんでございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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