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暮らし

今の時代「自分で自分の介護をする」心持ちが大切 要介護でも、おひとりさまでも「最期まで自宅で暮らすために」必要な3つのポイント【専門家解説】

 今はまだ元気でもいずれ訪れる老い。高齢の親のこと、そして自分のことも「介護が必要になったら施設に入るしかないのか」と漠然とした不安を抱えているシニア世代は多いだろう。『自分で自分の介護をする本』の著書で介護ジャーナリストの小山朝子さんは、介護が必要になっても、おひとりさまでも、最期まで住み慣れた家で暮らすことができるという。実例をふまえ、そのヒントを教えてもらった。

この記事を執筆した専門家

小山朝子さん/介護ジャーナリスト

洋画家の祖母を10年に渡って在宅介護した経験から、執筆や講演会など多方面で活躍。介護福祉士の資格も持つ。著書『介護というお仕事』(講談社)のほか、2023年に発売した『ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本』はロングセラーに。新刊『【11の成功例でわかる】自分で自分の介護をする本』(ともに河出書房新社刊)が発売中。

介助が必要になったら「ひとり暮らしなんて無理?」

「誰かの手助けが必要に状態になったら施設に入るしかない」

「認知症になったら、金銭管理や健康管理もできなくなるからひとり暮らしは無理」

 あなたはそんな風に思っていませんか。

 筆者は、長年介護現場の取材や調査をし、全国各地にある独居の要介護者のお宅を訪問してきました。なかには認知症であったり、介助が必要であっても、ひとりで暮らし、自分らしい生活を貫き通している人もいました。

 多くの取材を通じて、「自分で自分の介護をする」ことについて考え、その方法について発信してきました。

「自分で自分の介護をする」とはどういうこと?

「自分で自分の介護をする」と聞くと、「身をよじりながら自分をお世話している自分の姿」をイメージした人もいるかもしれません。そうではなく、要介護になっても、自分が望む生活はできる。最期まで望む場所でひとり暮らしを続けることができる、ということをお伝えしたいのです。

 そもそも「介護」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは「介助」という言葉で表現される行為で、具体的には食事・入浴・排泄などの日常の動作の手助けをすることです。

 一方、「介護」とは、その人が望む生活を送るための支援であり、その実現に至るまでの過程も含まれると私は考えています。

 要介護にならないように、介護予防として体や心のメンテナンスをするのも「自分で自分を介護すること」なのです。

 日常生活で介助が必要になったとしても、「自分が望む生活がひとり暮らし」である場合、悩んだり、迷ったりしながらも結果的にその望みを叶えた人たちも多くいらっしゃいます。

最期までひとり暮らしを続けるための3つのポイント

 最新の拙著『【11の成功例でわかる】自分で自分の介護をする本』から、要介護となってもひとり暮らしを続けられた人たちの実例をご紹介します。彼女たちの体験をもとに、「介助が必要になってもひとり暮らしを続けるためのポイント」を3点紹介しましょう。

 まず1点目は「自分の望み」や「これだけは譲れない」ということを明確にしておくことです。望みはたくさんある必要はなく、一つ、ないし二つ、シンプルなことでいいのです。

 例えば「排泄の介助は受けたくない」という望みがあれば、その人の体の状態によってトイレを改修したり(手すりの設置や扉の変更)、着脱しやすい衣類を選んだりすることで可能になる場合もあるでしょう。

83才、軽度認知障害の女性の望み「料理を続けたい」

 安東洋子さん(83才、仮名)は「料理をしながら自宅で暮らしたい」という望みがありました。ところが、毎日の食事づくりに時間がかかるようになり、水を出しっぱなしにしていることに気づいてハッとすることが増えました。そこで「もの忘れ外来」を受診したところ、軽度認知障害(MCI)と診断されます。

 その後、ひとり暮らしは難しいのではないかと不安になり、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」の見学にも行きましたが、結果的にはヘルパーのサポートを受けながら料理をし、ひとり暮らしを続けています。

 洋子さんのように自分の望みがはっきりしていれば、周囲も本人の想いを叶えるべくサポートをしやすくなりますし、たとえ要介護の状態になった場合でも介護支援専門員(ケアマネジャー、以下ケアマネ)は介護サービス計画書(ケアプラン)を作成しやすくなります。

 ケアプランには、利用する介護サービスの種類や、いつ、どれだけ利用するかが記載されます。このケアプランの「核心」となるのが「長期目標」です。これは利用者がこれから先送りたい生活のことで、最終的に達成を目指すゴールになります。

 介護保険を利用するにあたっても、前提となるのはその人の「望み」であり、ケアマネに「すべてお任せ」という姿勢では、そのケアプランは絵に描いた餅になってしまいます。

 自分にとって最適なサービスを受けるには、まず自分の「望み」を明確にすることなのです。

 2点目は「人とのつながり」です。ひとり暮らしをしている人のなかには、家族と離れて暮らしている人もいれば、家族との繋がりがない人もいるでしょう。

 後者の場合、友人やかつての職場の仲間、地域の相談窓口の担当者、ケアマネなどとのつながりが支えになります。

 介護サービスを受けるための基本的な「人とのつながり方」も大事ですが、「認知症と診断された場合には親身になってくれる友人の存在も支えになります。

57才女性、クモ膜下出血の後遺症で要介護3「困難を乗り越えひとり暮らしを継続」

 そして3点目は、ビジネスの現場でも注目を集めている「レジリエンス(resilience)」。これは「困難にぶつかっても、しなやかに回復し、乗り越える力(精神的回復力)」のことです。
津田美保さん(57才)は55才でクモ膜下出血を発症しました。その後遺症で退職を余儀なくされました。

 これまで「自分の身を守れるのは自分だけ」と気を抜かずに生きてきたのに、「なぜ自分だけこんな目に遭わなければいけないのか」「クモ膜下出血を発症したときに命が助からなくてもよかったのではないか」と、自暴自棄になったこともありました。

 しかし津田さんはレジリエンスを発揮し、こうした問題に対処されていきました。その後、自宅から障害福祉サービスの就労継続支援B型事業所に通うことになり、自分を客観視できるようになったのです。働きながらリハビリも兼ねた生活を送り、ひとり暮らしを継続されています。

***

 今回ご紹介した事例をまとめた『【11の成功例でわかる】自分で自分の介護をする本』は、2023年に上梓した『ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本』(河出書房新社刊)の続編となっています。

 新著は、介護保険制度や認知症に関する基礎知識を紹介しながら、ひとり暮らしを選んだかたの「心の持ちよう」にも重点を置いて書きました。それは今現在ひとり暮らしをしているかたから、「心の持ちようを知りたい」という声が多く聞かれたからです。

 11人のリアルな声をまとめたこの本は「今ひとり暮らし」のかたはもちろん、「いつかはひとり暮らしになるかもしれない」あなたにとっての「お守り」になってくれると思います。

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