全国の老人ホーム今年の神7を紹介。ナンバー1は?高齢者住宅のプロが厳選
「リビング・オブ・ザ・イヤー」とは、高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)が主催し、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)など全国にある高齢者施設から、最も優れたホームを決めるコンテストだ。
2014年に始まり、今年で5回目。審査員は介護施設の経営者やケアマネジャーなど「介護のプロ」21人が務めている。審査員の1人で高経協の総監督・田村明孝さんが振り返る。
「決勝の1か月前にファイナリストの7施設が決まりましたが、その会議は例年になく議論が白熱していました。21人全員の承認を得て決まった7施設は、 “本当に入りたい”と思ってもらえる自信のある施設です」
最近では高齢者施設での事故や事件が多く、自分や家族の身を預けることへの不安も大きい。「プロの目」で選ばれた施設の特徴は、今後の老人ホーム選びの参考になるだろう。
ファイナリストの7施設を紹介する。
クラーチ・ファミリア古淵(神奈川県相模原市)
開設年月:2015年5月、敷金:25万円~、月額費用:17万8000円~、個室の広さ:19.76平米
URL:https://www.kuraci.co.jp/house/famila/kobuchi/
●食事量や診療回数を24時間チェック家族が安心できて超リーズナブル
介護業界はIT活用が進んでいる。「クラーチ・ファミリア古淵」も積極的に活用する施設の1つだ。
「『ユカリアケア』という自社開発のシステムで、食事の摂取量や訪問診療の受診状況を記録しています。記録した情報はご家族がいつでも把握できるように専用サイトを通じて情報開示している。ご家族の安心や信頼に繋がると好評です」(施設長の勝村雄二さん)
食事にも力を入れていて、2年前の「リビング・オブ・ザ・イヤー2016」では食事サービス部門で準決勝まで進んだ。
「月に1~2回、『お食事キャラバン』というイベントがあります。板前が寿司を握り、本格的なフレンチや和食のフルコースが楽しめる。ほかにも、毎日バリスタがいれた本格コーヒーや焼き立てのクロワッサンを味わうことができ、バーでは昼夜を問わずお酒が楽しめます」(勝村さん)
これで入居金は0円、月額費用も17万8000円からと、食費も込みで、リーズナブルな点も評価されている。
NRE大森弥生ハイツ(東京都大田区)
開設年月:2004年4月、敷金:50万円(入居保証金)、月額費用:26万2800円、個室の広さ:18平米
URL:http://www.nre.co.jp/nres/oomori/tabid/537/Default.aspx
●JRの関連会社という“お墨付き”生活のハリを生む地域密着型
今年の選考で特に重視されたのが「社会と施設のかかわり」である。この新基準で特に好評を得たのが「NRE大森弥生ハイツ」だ。
「高齢者施設に住むと、日々の生活が施設内だけで完結してしまい、外出の機会が少なくなる。そうすると生活のハリがなくなります。このホームは『地域との一体化』を理念に、1階ロビーや多目的室、図書館などを地域に開放。ベビーカーを押すママグループや近隣のお年寄りが自由に出入りし、憩いの場になっています」(高経協の事務局長・碓田茂さん)
外部の人々が出入りすることで、施設全体に活気が生まれるだけでなく、入居者の生活が外から見える「開かれた施設」ともいえる。
「地域密着を掲げる施設は多いですが、リスク管理が難しい。この施設を運営するNREはJRのグループ会社なので安全管理に厳しく、地域交流の場として成功させていて見事です」(前出・田村さん)
施設長の片山敬一さんが語る。
「近隣のお母さんたちは、お子さんを連れて夕方の時間帯に来てくれるんです。というのも、認知症の1つに『夕暮れ症候群』といって、夕方になると寂しくなったり不安になったりしてソワソワ落ち着かなくなることがある。でも子供たちと一緒に過ごす時間は症状が和らぎますし、食欲も出るんです」
古き良き日本の「ご近所づきあい」を感じる施設だ。
アライブ浜田山(東京都杉並区)
●開設年月:2003年4月、入居一時金:2757万円、月額費用:24万円、個室の広さ:18.2 平米~
URL:http://www.alive-carehome.co.jp/home/hamadayama/
●他にはない「ガーデニング」効果で脳の活性化と認知症ケア
玄関を入ってすぐのロビーには中庭を一望できる大きな窓がある。足を踏み入れると、1本の大木の周りに四季折々の数十種類の花が咲き乱れていた。美しい庭の効果は、見て癒される、季節を感じられるだけではない。「アライブ浜田山」ホーム長の佐藤早苗さんが話す。
「この施設では、“庭に行きましょう”が合言葉。入居者のかたにお花を植えてもらったり、集まってお茶をしたり、摘んでお部屋に飾ったりといろいろな楽しみ方をしてもらい、自室にこもらず“庭に行きたい”と自発的に動くきっかけができます。入居したときに車イスだったかたが、毎日庭に出たことで歩けるようになったり、明るい表情になったりと、効果を感じています」
庭ではガーデニングのほか、トマトやきゅうり、かぼちゃ、メロン、すいかなどの野菜や果物も育てていて、収穫して旬の食材を味わうこともできる。
「ガーデニングは認知症ケア療法の1つです。例えば花を見たりにおいをかいだりすることで昔の記憶を呼び戻したり、自分で植えた花が育ち喜びを感じることで、脳が活性化される効果があります」(前出・田村さん)
施設で最期を迎えた入居者には、生前好きだった庭の花を摘んで棺に納めることもあるという。また、スタッフ1人に対する入居者の比率が1.5人と手厚いこともこの施設が評価される理由の1つだ
クロスハート石名坂・藤沢(神奈川県藤沢市)
開設年月:2010年8月、月額費用:16万4000円、個室の広さ:13平米
URL:https://www.shinkoufukushikai.com/care/yuryohome/crossheart-ishinazaka
●老後の蓄えと体力が増していく「仕事付き老人ホーム」で一生現役
取材した日の昼食は流しそうめん。天然竹の樋が並び、両脇に座った入居者が流れてきたそうめんを歓声を上げながら楽しそうにすくっていた。
「クロスハート石名坂・藤沢」は、「特定施設入居者生活介護」の指定施設。入居者が可能な限り自立した生活を送れるよう食事や入浴などの日常生活上の支援だけでなく、機能訓練などを提供。ここでは、入居者が意欲的に訓練を受けられるようある制度が導入されている。
「食器の配膳や下膳をしたり、他の入居者の介護を手伝ったりすると、『施設内通貨』という形で報酬を渡しています。その通貨は月に一度の『交換会』で日用品や食品と交換でき、皆さん喜んで真剣に取り組んでくださるんです」(施設長の藤澤祐人さん)
この施設に入居している柳澤正子さんは『通貨』の高額保持者だ。
「私、毎月交換会が楽しみなんです。スタッフに言えば普通に外で買い物もできますけど、この場所でみんなでワイワイやるのが楽しい。女性ってやっぱり買い物が好きなのよね」
この施設は介護付き有料老人ホームでありながら“仕事付き有料老人ホーム”も自称している。
「施設近くにビニールハウスがあり、そこで野菜を育てているんですが、その栽培のお手伝いをすることで入居者のかたは収入も得ています。入居者のご家族からは“うちの母が、仕事を頑張りすぎて腰が痛いと言っています”と嬉しそうに話してくれました。もちろん無理をするわけではありません。一生現役でいたい、一生誰かの役に立ちたい、そう思うかたにとって仕事は喜びに繋がる。すべては“元気に暮らしてもらいたい”という思いからです」(藤澤さん)
アズハイム練馬ガーデン(東京都練馬区)
開設年月:2017年6月、敷金:60万円、月額費用:39万5000円、個室の広さ:18.12平米
URL:http://as-heim.com/nerimagarden/
●「家に帰りたい」夢プロジェクトで車イス→杖で歩けるまで回復
介護業界でも「働き方改革」が進んでいる。団塊世代が75才を超えて後期高齢者となる『2025年問題』に備え、業務の効率化はすべての施設が抱える問題だ。
「『アズハイム練馬ガーデン』は働く人の負担を軽減し、その分入居者のかたがたに余裕のあるケアができるようになりました」(前出・碓田さん)
それを実現するために活用されているのがITだ。ベッドマット型の見守りシステム「眠りSCAN」が入居者の睡眠状況・心拍数・呼吸数を把握。情報を「EGAO link(エガオリンク)」というシステムで一括管理している。
従来はこうした情報はスタッフが手作業で記録していたので、大幅な効率アップとなり、入居者へのケアやリハビリにより時間をさけるようになった。
入居者は個別に1週間のリハビリスケジュールが組まれるが、車イスでしか動けなかった人が歩行器や杖を使って歩けるようになるなど、効果を実感する入居者は多い。そのリハビリの目標を設定する「夢プロジェクト」という取り組みもこの施設の特徴だ。
「例えば“自宅に帰りたい。でも自宅の前には長い階段がある”ということであれば、“じゃあ階段を上れるまでリハビリをしてご自宅に行きましょう”とお伝えする。その目標のために日々何をすれば叶えられるのかを、日常の動作に落とし込んで考えていきます。そうすることでリハビリも楽しんで行えますし、回復も早いんです」(ホーム長・小川恵子さん)
コンシェール舞浜(千葉県浦安市)
開設年月:2017年11、入居一時金:2577万円~、月額費用:17万4200円、個室の広さ:21平米
URL:http://www.c-24.jp/concier/maihama/
●セラピストのリラクセーションと薬膳料理で「癒し」にこだわる
「いらっしゃいませ」
施設に一歩入ると、コンシェルジュが出迎えてくれる。総絨毯張りの床に、大理石がアクセントとなった壁。ヒーリング音楽が流れ、ほんのりとアロマの香りもする。まるでホテルのロビーのようだ。支配人の佐藤良子さんが話す。
「弊社は『介護から快護へ』をコンセプトに介護事業を展開しています。コンシェール舞浜では『癒食同源』をテーマに、健康維持と介護予防のための独自のリラクセーションと、薬膳理論に基づいた食事を提供しています」
入居者はセラピストとしての専門的な研修を受けたスタッフから、東洋医学のアーユルヴェーダを取り入れたリラクセーションを週に1~2回受けられる。食事は選択制だが、管理栄養士が一人ひとりの体調を把握して考えている。
入居者の古郡恵美子さん(84才)は、膝の関節炎や重い糖尿病で要支援2の認定を受けて今年2月に入居。その直後に大腿骨骨折で1か月の入院を余儀なくされた。古郡さんが言う。
「退院して戻ってきたときは、車イスに自分で乗り降りすることもできませんでした。でもリラクセーションで疲れをとったり、スタッフのかたが根気強くリハビリに付き添ってくれたりして、3か月で歩行器を使って自力で歩けるようになりました。以前はインスリン注射も打っていたんだけど、最近はのみ薬だけになっています。ここの食事は塩分控えめなのに、おいしいのよ」
高齢者がけがをして入院すると、寝たきりになって体力が衰えたり、認知症が進んだりしがちだ。薬に依存せず、自力で回復力を高めていく取り組みが評価された。
せいりょう姫島(大阪府大阪市)
開設年月:2017年12月、月額費用:5万6000円、個室の広さ:17.1平米~
URL:http://www.f-seiryou.com/info/himejima.html
●開設後わずか半年で満床に まるでホテルの「おもてなし空間」
関東圏以外で、しかも特養で唯一選出されたのが「せいりょう姫島」。
「運営する『聖綾福祉会』はビジネスホテルチェーン『スーパーホテル』のグループ会社です。この施設の職員もホテルのインストラクターから研修を受けていて、挨拶や何気ない気遣いにホスピタリティー精神を受け継いでいるのが感じられます。見学に行った審査員が“こんなに違うのかと驚きました”と言うほどです」(前出・田村さん)
“入居者ファースト”を掲げ、さまざまなサービスが用意されている。地域の楽団を招いての定期演奏会、屋上を開放しての“アフタヌーンティー”など接客・接遇に特に力を入れており、「おもてなし」の意識は高い。女性の入居者から人気なのが「水へのこだわり」だ。
「世界8か国で特許を取得した自社開発の『健康イオン水』を使用。コレステロールや中性脂肪、疲労回復などに効果があります。飲料水はもちろん、食事もお風呂も健康イオン水です。女性の入居者から好評ですよ」(施設長の安田義和さん)
開設して半年で満床になったという人気も納得がいく。
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10月12日、「リビング・オブ・ザ・イヤー2018」の決勝戦が開かれ、大賞は、クロスハート石名坂・藤沢が受賞した。
※女性セブン2018年10月18日号
●最高の老人ホームランキング<1>~旨い食事部門~【2018夏 最新版】