猫が母になつきません 第254話「つかえない」
去年、留守番電話機を買い換えました。母が音量を最大にしても聞こえないというので。新しい電話機は親機もコードレス、周囲の音が大きい時に呼び出し音量が自動で大きくなる機能もついています。これで長電話の母が親機で電話をとってしまってずっとその場から動けないということもないし、テレビの音を大きくしていても大丈夫。でもいいことばかりではありません。ディスプレイが今までの倍くらいの大きさで読みやすくになったのに、なぜか母はそこに表示される操作手順を読もうとしないのです。音声でも案内されますが、新しさに馴染めないのかそれも耳に入らないようです。電話機が出す操作の指示をすべて無視し、本能だけで録音を聞き出そうとする母…。再生ボタンが小さいからかなとメモを貼りましたが、それでも毎回毎回「どうやって聞くの?」。買い換えからすでに9ヶ月…使える日が来る気がせず、もう留守番機能は使用しないことにしました。ほとんどの人はメッセージを残さないし、急ぎの用は携帯にかかるので必要はないのです。たまに残されている高齢者ならではの味なメッセージが聞けなくなるのはちょっと残念ですけど。
【関連の回】
第111話「るすでん」
第173話「るすでん_ふたたび」
第212話「こうのさん」
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。