冬は入浴関連死多発!正しいお風呂の入り方を専門家が解説
寒さが本格化するこの時期、体の芯まで温まる入浴タイムは至福のひととき。一方で、冬のお風呂では事故も多い。厚労省の統計によれば、年間約1万9000人の「入浴関連死」のうちの半数が、11~2月の冬場に集中している(2015年度)。
主な原因は、急激な体温変化による血管収縮とされているが、実はお風呂は入り方次第で、メリットがデメリットに早変わりする。「正しい入浴法」とはどんなものなのか。専門家に疑問点をぶつけてみた。
Q.何時に入浴すべきか?
A.就寝の1~2時間前
肌寒いこの季節、帰宅直後に「ご飯よりまずお風呂」といきたいところだが、理想の入浴時間は寝る前だという。温泉療法専門医で東京都市大学教授の早坂信哉さんはこう解説する。
「夕食が消化され、血糖値が高まると、一時的に脳が覚醒状態になります。この状態ではリラックスできず、心身のリカバーに最も大切な『良質な睡眠』が阻害されてしまう。とくに現代人は不規則な食生活のかたも多く、それにより安眠できていないケースが目立ちます。脳の覚醒を鎮める最も効果的な手段は、40℃のお湯に浸かること。就寝前に入浴することで、心身をリラックスさせる副交感神経が刺激されて、良質な睡眠を導いてくれるのです」
Q.一番風呂は体に悪い?
A.おすすめはしない
巷の通説で「一番風呂はお湯が硬い」「さら湯は毒」などと長くいわれてきた。温泉学者でモンゴル国立医科大学教授の松田忠徳さんが語る。
「この説は正しいです。一番風呂は塩素消毒された水道水をそのまま体に浴びることになるので、肌がピリピリする。刺激が強く、肌の弱い人には向きません。最初に誰か入浴すれば、塩素はその人の体に吸着するので、次のかたが入る時には塩素が抜けてお湯が柔らかくなります」
といっても、家族の誰かを“犠牲”にするのは考えもの。
「簡単に塩素を除去するには、備長炭を1~2本、お風呂に入れましょう。100円ショップで買えるものでもいいです。ネットに入れて浴槽へ入れてください。備長炭は1本で1か月ほど使えるのでコスパもいいです」(松田教授)
Q.おすすめの入浴剤は?
A.保温系。浴槽の種類によってはNGの入浴剤もある
自宅でも温泉気分が味わえるとあって、数多くの入浴剤がドラッグストアに並ぶ昨今。前出松田教授によれば、保温力を高めるものがいいと言う。
「個人的なおすすめは岩塩系の入浴剤。保温力も殺菌効果もあります」
ただし、循環式の追いだき機能を持つ浴槽の場合、入れてはいけない入浴剤がある。それが、硫黄成分を含むもの。給湯器の内部は基本的に銅でできており、硫黄系の入浴剤を入れてお湯を循環させると、銅を腐食させる恐れがあるのだという。
もし気づかずに入れてしまった場合、追いだきをせずに湯を抜こう。
Q.シャワー派ですが、毎日湯船に浸かった方がいい?
A.毎日浸かるべき
お風呂が肌を乾燥させるなら、毎日は入らず、シャワーで済ませてもいいのだろうか。
「乾燥が気になるかたも、毎日湯船に浸かるべきです。シャワーだけでは温熱効果を得られず、体の汚れも完全に落ちない上、“精神面”でも大きな差が出ることが判明しています。
過去、300人を対象に、週に7回以上お風呂に入っている人と6回以下の人の生活を比較調査した結果、6回以下の人は7回以上の人に比べて、睡眠の質が悪く、幸福度まで低いことがわかりました。主観的健康感といって、『毎日お風呂に入っている自分は清潔だし健康だ』と思うことで、前向きな精神状態になっていたのです。入浴は心身の健康に欠かせません」(早坂教授)
※女性セブン2017年1月4・11日
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