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暮らし

《死ぬ時に一番お金持ちでも意味がない》50代から考える「減らさない&使い切る」老後資金の出口戦略

 人生100年時代といわれるなか、「老後」として生きる時間はますます長くなっている。誰かに自慢する必要はなく、自分らしく生活できれば豊かでなくてもいい。貧しくなく、そして寂しくない老後を送るためには、どんな準備をしておけばいいのだろう。

 どう過ごすかで人生の最期を後悔なく迎えられるかが大きく変わる「老後」。悩みを多く抱え、孤独に過ごすのは避けたい、夫がいてもいなくても、子供や孫がいてもいなくても、備えるための知識が必要だ。

 そもそも老後とはいつから始まるのか。そして老後の準備はいつから始めるのがいいのだろうか。

「いろいろな定義があり一概には言えませんが、私が考える『老後』のスタートは、支出が働いて得る収入を上回ったとき。つまり定年退職してから準備を始めても遅いので、50代に入ったら早めに見通しを立て、各所へアンテナを張っておくことが大切です」

 そう話すのはファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん。老後を迎えるにあたり真っ先に考え、準備しておきたいのは「お金」の問題だと話す。

「老後資金の割り振りを考えるうえでの優先順位は、使うお金、先々や子供のために残すお金、いざというときに備えるお金。これらを意識しながら老後資金の使い方を考えておく。元気なうちに、使うお金と残すお金のバランスを考えるのも大事です」(黒田さん)

 老後のためにお金を貯めるだけ貯めて、ほとんど使わずに終わってしまう人は少なくない。終活総合支援士の武藤頼胡さんが言う。

「死ぬときにいちばんお金持ちになってもしょうがない。体の自由がききにくくなってからあれもすればよかった、これをやっておけばよかったと後悔する人は少なくありません。“老後のために”と備えたお金は元気なうちしか使えない。出口戦略を考えて、老後生活を楽しんでほしいです」

 最低限キープしておくべきお金もある。

「思わぬ病気や出費など、老後はいつお金が必要になるかわかりません。そこで生活費の3か月から半年分を、すぐに引き出せる『生活防衛資金』として確保しておきます。ただし、医療・介護や住宅修繕などまとまった支出も考えられるため、家計状況に応じて余裕を持たせておきましょう」(黒田さん・以下同)

60代からの体作りはもはや“遅すぎる”

 老後のお金を考えるうえでポイントになるのが、“どんな生活をしたいか”を具体的にしておくことだ。

「特に夫婦の場合、互いの金銭感覚や価値観を擦り合わせておくことや、生活コストを把握することが大事です。夫が退職後に妻と旅行に行きたいと思っていても、妻にまったくその気がないなど夫婦で価値観が違うことは多々あります。リタイア後は地方で暮らしたいという夫についていけないと夫婦関係に亀裂が入って、熟年離婚でもめることも。お金に対する考え方や老後の暮らし方を夫婦で早めに擦り合わせておくと準備もしやすくなります」

 子育てや仕事から“卒業”し、自由な時間が増えるからこそ元気でいられる体作りも、極めて大事な「老後準備」となる。

「60才、70才になってから健康のために運動しようとしても、体がとてもついていかないと皆さん言います。40代、50代のうちから運動を習慣化しておきましょう。信頼できるかかりつけ医を見つけることも重要です。家族よりも自分の体のことを理解してくれて、大きな病気にかかったときには医療のハブとなり、必要な病院や施設への手配をしてくれます」(武藤さん・以下同)

 最期まで自宅で暮らすことを望むなら、リフォームなどの準備が必要となる。武藤さんによれば、65才以上の人がけがをする場所の8割は家の中だという。

「持ち家なら段差をなくす、手すりをつけるなどの転倒リスク対策や介護対策を施しましょう。ただし、必要最低限にとどめること。子供が巣立って夫婦ふたりの生活になったら、ダウンサイジングしてフラットなマンションに住み替える選択肢もあります」

 子供がいるなら、持ち家をどうするかを事前に相談しておくことも大切だ。話し合っておかないと後々、相続などでトラブルのもとになりかねない。

 すでに賃貸で暮らしている場合は、ライフスタイルの変化に応じて、柔軟に住み替えられるのがメリットだが、近年は家賃の上昇が気がかり。また、ある程度の年齢になれば賃貸契約は難しくなる。

「加齢に伴い判断能力が低下したときに、契約の更新や引っ越し手続きをひとりでできるかもネックになります」(黒田さん・以下同)

 終のすみかを考えるなら介護や施設入居の可能性も視野に入れておこう。夫婦の場合、老老介護のリスクもある。

「どちらかが要介護になると内々に抱え込み、共倒れになるまで周囲から気づかれないというパターンは珍しくありません。さらに夫婦共に介護が必要になると、子供にかかる負担が非常に大きくなる。配偶者や子供がいるからと考えず、共倒れになる可能性も考えて、民間の老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)、特別養護老人ホームなどについて、元気なうちから選択肢と費用を調べておくことが大切です」

情報を仕入れてこそ「いい老後」になる

 老後準備には「老後に必要な情報を入手するための方法を知っていることが重要」と話すのは、行政書士で相続・終活コンサルタントの明石久美さんだ。

「自分が持っている情報だけではなく、外から情報をもらえるようにしておく必要があります。例えば介護について相談する場合も、社会福祉協議会や地域包括支援センターがどこにあるかさえ知らないかたもいます。自治体が配布している便利帳や広報誌や冊子などをもらい、困ったときに頼れるサービスやボランティアを確認しておきましょう」

 必要な情報は公的なものだけではない。老前整理(R)コンサルタントの坂岡洋子さんが言う。

「夫婦で話し合う際に、死別した後のことも想定しておく必要もあります。配偶者が突然いなくなったら生活が破綻してしまうケースは珍しくありません。自分がやっていないことを把握する、できるようになる意識を持つことです。死後の手続きは時間に追われたり、煩雑なものも多い。きちんと情報を共有することが大事です」

 自分以外に頼れる人がいないなら、病気やけがのときに専門家や民間の専門サービスの利用を考えておくと安心だ。

「財産管理の契約や任意後見契約、死後事務委任契約を依頼したい相手と結んでおきましょう。

 遺言書のほか、必要に応じて見守りサービスも準備しておきます。また、施設への入居や病院に入院する際は身元保証人が必要になります」(明石さん)

 保証人に関しては、NPO法人や民間の身元保証会社を活用することも可能だが、気になることも。

「サービス内容によっては数十万から数百万円単位のお金がかかるので、信頼できる事業者かどうか、どこまでがサービスに含まれるのか、企業の経営状態に不安はないか、頭がしっかりしているうちに情報収集をし、見極めておくことが大切です」(黒田さん)

 後見人選びにもこんな注意点がある。

「同年代の人だとどちらが先に逝くかわからないので、比較的若く、信頼をおけるかたを探すのがポイントです」(坂岡さん)

 物価高で生活が逼迫していると感じる人は多く、老後資金のためにお金を増やそうと考えるのは必然だが、明石さんは「多くを運用に回さない方がいい」と話す。

「私は財産管理の契約を本人と結んでいますが、運用商品は代理人では解約や売却ができないことが大半なので対応がしづらい。定期預金も同様です。資産運用は自分の健康状態を見ながら普通預金とのバランスを見てください」(明石さん)

50代から始めるべきコミュニティー作り

 お金や住まい、健康や介護なども重要だが、孤独・孤立で寂しい老後生活にしないためには、まずは家族との関係を見直してみよう。

「家族との関係が良好ならそれをうまく維持すること。関係がよくない場合は無理に改善しようとしても難しい。理想を求めず、その家族なりの適度な距離感を保ち、家族に依存しないことを心がけて。ただ、年に1回会うだけでもいいので、かかわりは持っておく方がいい」(明石さん・以下同)

 日常生活で重要になるのが、社会とのかかわりだ。

「なるべく外に出て、人と交流することが大切です。NPOや地域のボランティア、シルバー人材センターなど参加できる場所はいろいろあります。町内会などの近所づきあいも横の広がりが生まれやすいです」

 自治体が実施している習い事のサークル活動や、スポーツクラブに入会するのもいい。自分に合った居場所を気長に探してみよう。新しいことへの挑戦は脳や体への刺激にもなる。

「いきなり人間関係を作ろうとしても難しい。50代、60代のうちから、自分に合ったアプローチで、新しいコミュニティーへの仕込みをしておくことが大事です。

 一方、ひとりでいることと、孤独であることは違います。ひとりで楽しむ時間を保ちつつ、困ったときには頼れる友人や仲間がいれば、充実した老後生活につながると思います」

 生きがいを持ち、自分の好きなことをして過ごすことができれば理想的だ。

「不安があると好きなことに没頭できません。そのためにも充分な備えをしておきましょう」(武藤さん)

 備えあれば憂いなし。失敗しない老後のために、準備は早めに始めよう。

※女性セブン2026年9月10日号

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