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松島トモ子さん「ライオン&ヒョウに襲われたこと、6年にわたる老老介護…」壮絶な体験を経て見つけた真理|水族館イベントで明かした想い

 松島トモ子さんがステージに姿を見せた途端、会場は一瞬にして華やかな雰囲気に包まれた。ライオンとヒョウに立て続けに襲われて命を落としかけたこと、6年にわたった「老老介護」の壮絶な日々……。重い話をしつつ、絶妙なツッコミで客席を沸かす松島さん。2月8日(土)に「東京カルチャーカルチャー」で行なわれた「中村元の超水族館ナイト2025春vol.49 ぼくらはギリギリ生きている!」にゲストで登壇した松島さんが、次々と降りかかってきた想像を超えるギリギリ体験を語った。(取材・文/石原壮一郎)

「自分が好きだと思ったら、動物も私を好きになってくれると思ってるの」

中村元(以下、中村)「松島トモ子さんにゲストでお越しいただくのは、10年前に続いて2回目です。今日のお客さんで、そのときも来てくれてた人はいる?」

 主催者の中村さんが会場に呼びかけると、120人ほどで埋め尽くされた会場から、20人ほどの手が上がった。「超水族館ナイト」は、2008年から続く人気イベントだ。水族館プロデューサーとして知られる中村さんが、毎回多彩なゲストとともに、人間と自然との望ましい関係を考えていく。司会を務めるテリー植田さんのとぼけた司会っぷりも名物だ。

中村「まだトモ子さんがライオンやヒョウに襲われる前の話ですけど、ボクが三重県の鳥羽水族館でアシカの飼育員をやってた1980年代前半ぐらいに、初めてお会いしたんです。そのときも『そいつはすぐに噛むので、決して前に行ってはいけませんよ』と注意しようとしたら、もう正面に座ってた。しかも、頭をなでてる。噛まれなくて本当によかったですよ」

松島トモ子(以下、松島)「私、自分が好きだと思ったら、動物も私を好きになってくれると思ってるの。そんな自信があるっていうか。でも、そうじゃなかったから、アフリカであんな目に遭ったんだけどね」

 この二人だからこそのエピソードに、会場は大ウケである。ご存じのように松島さんは、1986(昭和61)年にテレビ番組のロケで訪れたアフリカのケニアで、ライオンに全身を何十カ所も噛まれ、そのわずか10日後にヒョウに第四頸椎をかじり取られて、命を落としそうになった。

中村「松島さんのギリギリな体験は、それだけじゃないんですよね。終戦の直前に当時の満州、今の中国東北部で生まれて、命からがら日本に引き揚げてこられた」

松島「父は出征していて、母は生後十か月の私を抱いて歩いて歩いて、やっと日本に向かう船に乗れたのはいいけど、食べるものはないし船内で伝染病も蔓延してた。たくさん子どもがいた中で、生きて帰れたのは私ともうひとりの男の子だけだったそうです」

 過酷な引き上げ体験や、ライオンとヒョウの襲撃を奇跡的に乗り越えた松島さん。なぜ自分は生かされているのか、常にその意味を考えているという。

まわりの人は反対した「母の自宅介護」

 松島さんが子役として芸能界にデビューしたのは、4歳の時。以来、母の志奈枝さんが公私ともに松島さんをバックアップして、幅広い活躍を支えてきた。そんな母が95歳で認知症となる。松島さんは、自宅で介護する道を選んだ。

松島「母にはそれまでお世話になりっぱなしだった。一卵性親子って言われてたんです。恩返しのつもりで、自宅で介護することにしたんです。まわりの人やお友達から『あなたには無理』『施設に預けたほうがお母様も幸せ』と、さんざん反対されたんですけどね」

中村「ぼくもその時、大きなお世話は承知の上で、施設を利用したほうがいいとメールしたんですよね。そしたらトモ子さんから、ものすごく怒ったメールが返ってきた」

松島「そうだったかしら、ごめんなさい。私も、きっとギリギリだったのね。ヘルパーさんや親戚の人に助けてもらいながらの介護生活でしたけど、誰もいないときは私が食べるものを用意しないといけない。それまでお湯も沸かしたことなかったから、手探りもいいとこでした。でも、たまに正気に戻る日があって、私の顔をまじまじと見て『トモ子ちゃん、なんでそんなに老けちゃったの』ですって。誰のせいだと思ってるのよねえ」

 6年にわたった介護生活を経て、志奈枝さんは100歳で旅立った。今では笑って話すことができるが、渦中のときは心身共に追い詰められた状態だったという。

松島「朝が来て、母の部屋に行くときに『お願いだから……』と、よくないことを願ったことが何度もあります。でも、いざいなくなったら寂しいもんですね。あれもしてあげればよかった、これもしてあげればよかったと思うことばかりです」

中村「お母さんのお葬式のときの松島さんのスピーチ、よく覚えてます。ニコニコしながらお話されてた。いろいろ思ったけど、自宅で介護してよかったって」

 振り返って、自宅介護を選択したことには満足していると松島さんは言う。もちろん、あくまで「自分にとっては」であり、施設を利用する選択を批判する気はまったくな

介護生活の渦中に書いた本に『老老介護の幸せ』というタイトルを付けた理由

 介護と仕事でギリギリの状態だったときに、編集者に強く薦められて書いたのが著書『老老介護の幸せ 母と娘の最後の旅路』(飛鳥新社、2019年刊)である。

松島「今はいっぱいいっぱいで、本を書くなんて無理ですって何度もお断わりしたんだけど、ほら、編集の人ってしつこいでしょ。でも、書くことが逃げ場になったかもしれない。つらいときや苦しいときは、何でもいいから書き散らかすと気持ちが楽になるんじゃないかしら」

中村「いいタイトルですよね。『幸せ』って付けたところがすごい。介護生活のことや松島さんの思いはもちろん、それまでの親子の歩みが詳しく綴られています」

松島「タイトルを考えるときに『老老介護』は絶対に入れたかったんです。でも、私が考えたのは『老老介護の残酷』とか『地獄』とかそういうのだったんだけど、編集長が『それじゃ売れません』と言って『幸せ』って付けてくれたの」

中村「たしかに、残酷とか地獄とか言われたら、本を買う気にはなりませんね」

松島「本が出たときは介護の渦中で、私、ぜんぜん幸せじゃないのに……と思ったけど、今になって思うとたしかに幸せだったわ」

中村「介護の経験を通して、トモ子さんはどんなことを感じましたか」

松島「こんな私が曲がりなりにも母を介護できた。絶対にできないってことは世の中にはないってことかしら。それと、どんなときでも幸せはあるし、満足感もあるってこと」

中村「今日は貴重なお話をありがとうございました」

※松島さんの介護の日々や本には記されていない「見送った後」のこと、母親への思い、そして、5月23日(金)の成城ホールでのコンサートをはじめ今後の活動について、特別インタビューでじっくりお話を伺いました。記事は近日公開です。乞うご期待。

松島トモ子(まつしま・ともこ)

1945年7月、旧満州(中国東北部)奉天に生まれる。父はシベリアに抑留されたまま死亡。1950年、映画『獅子の罠』でデビュー。以後、名子役として高い評価と絶大な人気を獲得。『鞍馬天狗』『丹下左膳』など約80本の映画で主演を務める。少女雑誌の表紙モデルや歌手としても活躍。その後、ニューヨークに2年間留学し卒業。50代から取り組んだ車椅子ダンスでは、1998年に世界選手権で優勝した。無類の動物好きとして知られるが、テレビ番組の取材でライオンとヒョウに襲われ、奇跡的に助かった経験を持つ。現在は歌手活動や講演など、多方面で活躍を続けている。おもな著書に『母と娘の旅路』(文藝春秋)、『車椅子でシャル・ウイ・ダンス』(海竜社)、『ホームレスさんこんにちは』(めるくまーる)など。
松島トモ子オフィシャルブログ「ライオンの餌」 https://ameblo.jp/matsushima-tomoko

中村元(なかむら・はじめ)


1956年、三重県生まれ。日本でただ一人の水族案プロデューサー。1980年、鳥羽水族館に入社。顧客起点での展示や広報活動の重要性に着目。ラッコブームを起こし、集客200万人を達成する。2002年に独立後、新江の島水族館、サンシャイン水族案、北の大地の水族館など多くの施設で、斬新な展示とプロモーション術によって、奇跡的な集客増を成功させた。現在、複数の水族館や美術館で、展示開発プロデュースおよび広報集客戦略のアドバイザーとして活躍。滋慶学園 ECO動物海洋専門学校・名誉教育顧問、日本バリアフリー観光推進機構理事長などを務める。最終回となる「中村元の超水族館ナイト2025夏vol.50」は、東京渋谷・東京カルチャーカルチャーで6月14日に開催。
中村元事務所サイト https://aquarium-pd.jp/index.html

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