樹木希林さんも… 高齢女性が恐れるべき「死を招く骨折」とは
「まず知ってほしいのは、高齢の女性ほど、転倒・骨折のリスクが増すことです」
と指摘するのは、田辺整形外科医院理事長の田辺秀樹医師だ。
「年を取ると視力の衰えや筋力、判断力の低下などでちょっとしたことでもつまずいて転びやすくなります。特に閉経後の女性は女性ホルモンの分泌が低下して骨密度が減るため、ちょっとした衝撃でも骨折しやすくなります」
東京消防庁の調査によると、2016年の日常生活の事故で救急搬送された高齢者約7万人のうち「転倒」が8割以上を占めている。転倒によるけがのうち、高齢者が骨折する頻度が高いのが、大腿骨である。大腿骨は太ももに入っている骨で、人間の骨のなかで最も大きい。その大腿骨のうちでも折れやすいのが、脚の付け根にある「大腿骨頸部」だ。
『大腿骨近位部骨折の発生推計数に関する全国調査』(2012年度)によると、1987年に5万3100件だったものが、2012年に17万5700件にまで急増した。超高齢化を背景に2020年には男女合わせて約25万人に達すると予測される。なかでも女性は男性の3倍以上の発生件数がある。
また、『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』(2015年版)によると、女性は70才を過ぎると、40代と比べ約5倍、大腿骨を骨折する人が増えている。
芸能界でも高齢者の大腿骨骨折は多発しており、2017年には研ナオコ(65才)が舞台公演中にバランスを崩して転倒し、右大腿骨頸部を骨折。2015年には赤木春恵(94才)が自宅を歩行中に転倒し、左大腿骨を骨折した。ほかにも吉行和子(83才)が2013年に、木の実ナナ(72才)が2015年に骨折して入院生活を送っている。
注意すべきは、家庭内でのちょっとした転倒が骨折につながることだ。前出の東京消防庁の調査によれば、高齢者が転ぶ事故の6割以上を屋内が占め、なかでも「居室・寝室」での転倒事故発生が多いという。吉田整形外科院長の吉田雅之医師が説明する。
「家電製品の電気コードに引っかかったり、わずかな段差でつまずくことが転倒から骨折につながります。視力の低下した高齢者は特に注意が必要です」
樹木さんは知人宅の階段で尻もちをつき、黒柳はたまたま足をぶつけただけだった。最も憂慮すべきは「予後」の悪さだ。吉田医師が続ける。
「大腿骨を骨折した高齢女性の死亡率は骨折していない人と比べて明らかに高くなります。10~20%が骨折から1年以内に死亡するというデータも報告されています」