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女優で市議の石井めぐみさんに教わる「手話の基本」

 1980年代、刑事ドラマやお笑いバラエティー番組など、幅広いジャンルで活躍していた女優で東京・国立市議会議員の石井めぐみさん(57才)。プライベートでは、障害を抱える長男の成長を綴った著書が話題にもなった。自身の経験から福祉活動に力を注ぐ今、手話がコミュニケーションの間口を広げた。

市議として聴覚障害のある人の意見が聞きたい

 2015年4月、国立市議会議員に当選した石井さんは現在、議会の広聴委員長、福祉保健委員会副委員長として日々、多忙な毎日を送っている。そんななか、昨年末、手話の資格を取得。きっかけとなったのは、こんな出来事だった。

「毎月、市民のかたに集まっていただく意見交換会を開いているのですが、なかには聴覚障害のあるかたもいらっしゃるんですよ。ところが、ご本人は来られても、手話通訳士のかたの都合がつかない。伝えたいことが伝えられず、あきらめて帰ってしまうことがあったんです。せめて、言いたいことの最初のひと言でもわかるようになれれば。なるべく多くの人の意見を議員が聞きたいと思ったら、やっぱりこちら側もコミュニケーションの手段をできる限り増やさなければならないなと思ったんです」(石井さん・以下、「」同)

 思い立ったら一念発起。通信教育の『手話入門講座』を受講し、半年後に修了した。

「毎朝30分。DVDとテキストで学んでいくんですが、最初はすごく難しかったですね。もう、物覚えもあんまりよくなくなってきてるっていうのもあるんだけど(笑い)、えーっ、ホントにこれ、みんな覚えられるの!? って。なぜかというと、テキストの講師も表情から動きまではっきりわかりやすい人と、流れるように滑らかな動きをされる人とさまざまなんです。だから、講師が変わるとわからなくなってしまったり…。文章を分割して読み取るまでに時間がかかりましたね」

 だが、慣れてくると次第に一つひとつの言葉の意味が理解できるようになった。

「英語がわからなくても単語がいくつかわかればなんとかなるぞっていうあの感覚。多分、完璧にわかろうとすると挫折しちゃうと思うんですよ。あきらめずに慣れていくことがコツかなと思います」

相手の意図をくみ取る気持ちが大事

 最初は手の動きばかりを意識してしまい、表情がおろそかになってしまいがち。ともすれば、真意が伝わらずに終わってしまうことにもなりかねない。石井さんは、手話は形で受け取るのではなく、その人の伝えたいものを読み取るものだと話す。

「要は気持ちですよね。あくまでも相手の意図を受け入れる入り口でいいと思うんです。とっかかりさえつかめれば、次のやりとりは筆談という方法もありますから。今はスマホやタブレットもあるし、便利な電子メモパッド(筆談ボード等)もある。もちろん、紙を出して書いてもいい。そういうことが、コミュニケーションなんじゃないかなと」

 石井さん自身、常時、バッグの中に電子メモパッドを備え、聴覚障害者を交えた傍聴会などに役立てている。

「こちらからちょっとご挨拶ができるようになってからは、直接、私に意見を言ってくださるようになり、嬉しかったですね。正直、それまでは私自身、聴覚障害者のかたとお会いしたとき、どこか身構えてしまうところがあったかと思うんです。そういう部分がやっぱり垣根になってしまって、相手のかたにも“この人は私の話を聞いてくれるかな?”という不安を抱かせてしまったのかなと…。手話を覚えたことで、積極的になれましたね」

タブレットを用いた「遠隔手話通訳サービス」にも注目

 お店やサービスカウンターなどの窓口に聴覚障害のある人が来た際、タブレットを用いて、オペレーターが窓口係員と利用者の言葉を手話と音声で同時通訳する遠隔手話通訳サービスについても、今後の需要拡大に注目していると石井さんは言う。

「手話通訳がボランティアだけでなく、職業として確立され、多くの人に認知されていくといいですね。個人が契約する場合は、自分に合ったサービスを選ぶこと。行政が導入する場合は利用者の意見をうかがいながら、手話通訳者の派遣が必要かどうかを見極める必要もあるかと思います。いずれにしても手話が身近なものになることで、聞こえる人と聞こえない人との交流が増えるといいですね」

 そして、石井さんは手話の最新事情についてこう語る。

「手話は、外国と日本で異なることはもちろん、国内でもその人が暮らしていた地域の文化や風習などによっても表現が違う場合もあります。また、毎年約200語の新語も誕生し、最近では『スマホ』や『アプリ』などIT用語も多く使われています。なかには、多様に広がりを見せる手話に、“覚えるのが大変”と躊躇してしまう人もいるでしょう。

 しかし、大切なのは相手が“何を聞きたいのか?”ということと、こちらが“何を伝えればいいのか?”というごくごくシンプルな心の持ち方です。恥ずかしがらず、楽しみながら実用的に使ってください。コミュニケーションのスキルアップも間違いありませんよ!」

日本手話の基本的な言葉を覚えよう!

 今回は初心者でも覚えやすい日本手話の基本的な言葉を6つマスター! 難しく考えず、まずは相手の目を見て、声を出しながら大きな口の動きや顔の表情を使って表現することが大切です。

●ありがとう

 左手の手のひらを下に向け、開いた右手を左手の甲に垂直にのせる。右手を手前に上げて軽く会釈する。

●すみません

 右手の親指と人さし指で、眉間の間をはさむ。右手を前に倒しながら謝る。

●わかりました

 右手のひらを胸に当て、下に下ろす。
※ワンポイント 手話は利き手を主にして行うのが基本。無理に手を変えなくても利き手で行えば大丈夫です。

●何?

 右手を前に出し、人さし指を左右に2~3回ふる。

●場所

 胸の前で右手指先を軽く曲げ、下に下ろす。

病院

  右手人さし指で左手首を押さえる(脈をとる動作)。両手を向かい合わせて上げ、中央で合わす(建物を表す)。

撮影/浅野剛

※女性セブン2018年4月19日号

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