孫が見た老々介護「祖父の死亡宣告、2時間後には葬儀社へ」葬儀の金額に戸惑う祖母が発した言葉
ヤングケアラーとして母のケアを担ってきた高橋唯さんは、近所に暮らす祖父母の老々介護をサポートしてきた。半年間の介護を経て、入院先の病院で旅立った祖父だったが、息つく暇もなく葬儀の手配がスタート。困惑する祖母をフォローしながら、葬儀社との交渉が始まって――。
執筆/たろべえ(高橋唯)さん
「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/
半年間の老々介護を経て緊急入院した祖父、2週間で旅立つ
筆者の祖父母が経験した「老々介護」。80代の祖母が、90代・要介護2の祖父をケアしてきた。老々介護は半年ほど続いたが、祖父は大腸がんの疑いで全身状態が悪化し、さらに腎盂腎炎(いわゆる膀胱炎が悪化したような感染症)を発症し、緊急入院。その後、約2週間で息を引き取った。
→前回の記事:孫が見守った《老々介護》は閉幕か?「祖父、最期の刻。心電図の音が響く病室でかける言葉がみつからない」
看護師「葬儀会社は決めていますか?」
筆者と祖母、父、訪れた親戚たちが、心電図モニターが動かなくなった祖父を囲んで、病室でしばらく待っていると、医師がやってきて死亡宣告を行った。
医師の「ご臨終です」の言葉の後、看護師から「これからお祖父様のお身体をきれいにしていくので、病棟のロビーでお待ちください」と案内があり、我々は病室を後にした。
ロビーに移動すると、また看護師に声をかけられて死亡診断書を受け取った。
「準備が整いましたら、ご移動をお願いしたいのですが、葬儀会社は決まっていますか?」
正直なところ、筆者たちはまったく何も調べていなかった。その旨を伝えると、「それでは、お近くの患者さんがよく利用している葬儀会社の中から選んで連絡をして、お迎えの時間が決まったらお知らせください」と葬儀会社のリストを渡してくれた。
近年、葬儀に関するトラブルが増加している
最近、テレビやネットニュースで葬儀に関するトラブルをよく目にする。
国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられる葬儀サービスに関する相談は増加傾向で推移しており、年間で900件前後となっている。
よくあるのは、葬儀のあり方が多様化したことで、細かなオプションが増えて、最終的に広告の料金よりも高額になるケースだという。
また、エンバーミングという遺体の保存技術も普及したが、ドライアイスの使用だけで十分だったのに不必要に契約させられた、といったトラブルも聞いたことがある。
筆者もそういった話を知ってはいたものの、近所の葬儀会社を調べてみるということには思い至っていなかった。
一社一社を比較検討している時間はなく、とりあえず名前を聞いたことがある葬儀会社に決めて連絡をした。
どんな葬儀にしたいのか?
葬儀会社に連絡したところ、遺体を搬送する車両が出払っていて、少し時間がかかると言われた。
迎えを待つ間、祖母と希望する葬儀内容をすり合わせておくことにした。祖母に「お葬式、どんな風にしたいの?」と聞いてみると、
「うーん、よくわからないけど、とにかく家族葬ってやつかな。全部一番安いやつでいい。誰も来ないし、身の丈ってもんがあるから」とのことだった。
祖父は家族以外の知り合いはほぼいないので、筆者、父、親戚も同意した。
そうこうしているうちに葬儀会社の車が到着した。死亡宣告から2時間ほどである。祖母は祖父と一緒に同乗し、筆者と父、親戚はそれぞれ葬儀会社に向かった。
これからの流れについてネットで調べていたところ、「保険の請求や年金の手続きで提出するので、死亡診断書を10枚程度コピーしたほうがいい」という情報が目に入ったので、葬儀会社に向かう途中でコピーをとった。
「家族葬、とにかく安いプランで…」
病院を出て15分ほどで葬儀会社に着いた。さっそくスタッフが、「喪主様はどのようなご葬儀をご希望ですか?」と祖母に尋ねた。
祖母が「いわゆる家族葬ってやつで」と返すと、スタッフは「もう少し具体的にお伺いできますか?」と続けた。
「えーっと、とにかく一番簡単なのがいいんだけど…」と返答に困る祖母を見かね、筆者は思わず「一番安いプランで、オプションはいりません」と口を挟んだ。
するとスタッフから、想像していなかった一言が返ってきた。
「うちはプラン制ではなく、ご相談しながら決めるオーダーメイド形式なんです」
筆者は「絶対に最安値のプランを選んで、余計なオプションを契約させられないように気をつけるぞ!」と意気込んでいたので、ちょっと拍子抜けしてしまった。
オーダーメイド葬儀って…高そう?
その後はスタッフと「祭壇の規模はどうするか」「棺の種類はどれにするか」などといったことから「棺に入れる花は白か、カラフルなものか、量はどのくらいか」といった細かなことまで、ひとつひとつ相談していった。
途中で遺影の加工の仕方を決める場面もあり、背景や服装など見本から細かく選ぶことができた。写真は後から持ってきてもよいとのことだったが、筆者はたまたま家族写真のアルバムを持っていたので、その中から祖父の写真を選ぶことができた。
その日のうちに遺影を選ぶことになると思っていたわけではないが、せっかく親戚も来るから話のタネになればと病室にアルバムを持って行っていたのが役に立った。
「オーダーメイド」と聞いて、なんだか割高そう…と身構えていたが、最終的には家族みんなが納得のいく価格と内容で落ち着いた。
帰る前に、安置室にいる祖父のところに寄ると、花が供えられ、きれいに身支度が整えられていた。
葬儀のことは「事前に検討しておいた方がいいかも」
今回、筆者たちはたまたま良心的な葬儀会社を選ぶことができたが、事前に何も調べずに、短い時間で葬儀会社を選択するのはリスキーなことだと感じた。
また、病院によっては遺族の控え室があるのかもしれないが、筆者たちは病棟ロビーでリハビリに励んでいる患者もいる中で葬儀の話をしていて、若干の気まずさもあった。そういう意味でも、やっぱり近隣の葬儀会社の情報は早めに確認しておいた方がよいと思った。
ようやく一段落と思ったが、このあと祖母の家に移動し、死後手続きの確認をすることに…。
