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高木ブー、ドリフのメンバーとラスベガスに行った想い出「ショーはコントの勉強になった」連載 第98回 

 ウクレレの季節を迎えて、ますます元気な高木ブーさん。本格的にスタートした「ドリフ麻雀」で、6月は見事に2連勝を飾った。「僕は流れにまかせて打っているだけ」と謙遜するが、そのスタンスはブーさんの人生にも通じる。麻雀からラスベガスの思い出、ドリフのメンバーと楽しんだ遊び……。貴重なエピソードが次々と飛び出す。(聞き手・石原壮一郎)

麻雀も人生も目の前の「いい牌」を集めてたらうまくいった

 6月はいい月だったな。楽しい収録もあったし、家族に父の日を祝ってもらった。そうそう、あるサイトが調査した「90代と言われて驚く芸能人」のランキングでは、黒柳徹子さん、草笛光子さんに続いて、3位に入ってたみたい。男性でトップだったのは、とっても光栄です。90歳になってよかったよ。

 なんと言っても嬉しかったのは、「ドリフ麻雀」で2回続けてトップを取れたこと。6月は井上順さんと浅香唯さんがゲストだったんだけど、二人も加藤(茶)も僕が連勝を決めたときは「まさか!」って顔をしてたな。もちろん、運がよかっただけで、麻雀に詳しい人が見ると「えっ、それを捨てるの?」っていう場面がちょいちょいあるらしいけど。

 一般的には、早い段階から完成形を思い描いて、それに沿って捨てる牌を選んだり安全な牌を残しておいたりするのが、「上手な打ち方」とされてる。でも僕は、目の前の牌だけ見て、できるだけいい手になるようにひたすら突き進んでいくんだよね。だから、ツキに恵まれているうちはいいんだけど、調子が悪くなるとたちまちやられちゃう。

 昔、長さん(いかりや長介)ちでやってた忘年会や新年会で、メンバーやスタッフとたまに麻雀してた頃からそうだった。ふと気づいたけど、僕の人生というか生き方自体、そういう感じかもしれない。先々のことを考えて計画的にやっていくんじゃなくて、目の前の楽しそうなことに飛びついたら、たまたまいい結果になった。

 ウクレレを始めたときもプロのバンドマンになったときも、長さんに声をかけられてドリフに入ったときも、「面白そう」と思ったからそうしただけで、先々の計画や展望があったわけじゃない。勝ったとか負けたとかっていう問題じゃないけど、自分としては後悔のない道を歩いてこられたってことは、きっとツキに恵まれてたんだよね。

「ドリフ麻雀」はギャンブルじゃなくてゲームだけど、ドリフターズのメンバーはみんなギャンブルがけっこう好きだった。僕はそうでもなかったな。ただ、かなり昔に加藤と仲本(工事)の3人で、川崎競馬で「ヤングウェイ」っていう競走馬を共同で持ってたことがある。大逃げする馬で、何回か勝ったんだよね。その馬が出る日はせっせと馬券を買ってた。ちゃんと計算してないけど、トータルでは確実に大赤字だっただろうね。

 ドリフのメンバーとスタッフとでラスベガスに行ったことも何度かある。『8時だョ!全員集合』のスタッフ全員とも行ったな。ラスベガスのカジノって、ブラックジャックだけでもテーブルがいくつもあって、それぞれレートが決まってる。僕は最低5ドルから勝負できるいちばんレートが安いテーブルで、ちまちま遊ぶのが好きだった。

 いつも負けてばっかりだったんだけど、知り合いになったカジノの偉い人に、ある年に日本人形をお土産に持ってったことがある。ガラスケースに入っていて、和服姿のきれいな女の人が優雅に踊っているようなの。飛行機で運ぶのはたいへんだったんだけど、すごく喜んでくれたんだよね。

 もちろん、ヘンな下心があったわけじゃないよ。でも、その人がディーラーに耳打ちをしたら、なぜかいいカードばっかり来るようになった。ラスベガスで勝ったのはそのときだけ。だから逆に言うと、素人が勝てるようなところじゃないんだよね。ディーラーの胸先三寸で勝負が決まっちゃうんだから。

 ラスベガスでは、カジノばっかり行っていたわけじゃない。どのホテルでもいろんな種類のショーをやってるし、街のあちこちにライブハウスやジャズ喫茶がある。長さんの「次はこれ行ってみよう!」という号令に従って、みんなで片っ端から見て回った。さすがショービジネスの本場だよね。見るもの聞くもの新鮮で、どのショーも勉強になったな。仲本の「ハイ、ポーズ」もそうだし、コントのヒントをたくさんもらった。

 みんなで「遊び」も一生懸命にやったのが、ドリフの大きな強みだったかもしれない。メンバーとは草野球とかクレー射撃とか8ミリ映画の撮影とか、いろんな遊びをずいぶんやった。遊ぶことでお互いをより深く理解したり息が合ったりして、コントがさらに面白くなるっていう部分は間違いなくあったと思う。

 その頃から長い年月が経って、80歳になった加藤と90歳になった自分が、今も麻雀をして一緒に遊んでる。しかも、それを見てたくさんの人が楽しんでくれている。こんな幸せなことはないよね。しかも6月は2連勝だなんて、バチが当たっちゃうよ。7月はどんな結果になるかまだわかんないけど、コテンパンにやられたとしても文句は言いません。

高木ブー(たかぎ・ぶー)

1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。卒寿を記念して出版された『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス、2,700円+税)と『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館、2,200円+税)が好評発売中! イザワオフィス公式YouTube新企画「ドリフ麻雀」は、毎週土曜日午前9時に新たな動画を公開。https://www.youtube.com/playlist?list=PLKMESq2tZllFyDSj1TqOds_X_tQMqMMJr

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取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。最新刊『失礼な一言』(新潮新書)が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。

●高木ブー自著発売で取材殺到「インタビューを受けるのはわりと好き。新しい人に会えるしね」|連載 第97回

●「ブーたんはドリフのクッションみたいな存在」と加藤茶から言われた高木ブー|連載 第95回 

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