《飲み込む力で誤嚥を防ぐ》耳鼻咽喉科医が伝授! 舌とのどを鍛える「ごっくんトレーニング」
舌の主な役割は、口の中の食べ物をまとめてのどへ送り込むこと。しかし、加齢とともに舌の動きが衰えると、のどの飲み込む力にも影響し、誤嚥性肺炎を引き起こして死に至る可能性も。100才まで元気に過ごすために必要な、舌の筋力と柔軟性を鍛えるトレーニングを耳鼻咽喉科医が伝授!
「飲み込む力」は知らないうちに衰える
「食事中によくむせる」「お茶を飲んだだけなのに、せき込む」──このようなことが増えてきたら、「飲み込む力」が衰えているサイン。
「飲み込む力は、ある日突然衰えるわけではありません。60代から少しずつ弱くなり、70代になると衰えがはっきりする人が増えます。個人差はありますが、50代などの早い段階から意識して鍛え、飲み込む力を維持することが大切です」
と話すのは、耳鼻咽喉科医の浦長瀬昌宏さんだ(「」内、以下同)。
私たちが普段、何気なく行っている飲み込む動作は、舌やのどなどが絶妙なタイミングで連携することで成り立っているという。
「食べ物を口に入れてかみ砕いたら、舌が食べ物をひとまとめにしてのどの奥へと送り込みます。すると、のどぼとけが上がってのどごと持ち上げ、食べ物が気管ではなく食道へと進むように誘導されます」
ところが加齢などによって舌の筋力が落ち、食べ物をうまくまとめられなくなると、のどの奥まで送り込めなくなる。
舌の力が弱まると、連携しているのどの力にも影響し、のどぼとけを充分に持ち上げられなくなり、食べ物や飲み物、唾液などが気管へ入り込む「誤嚥」が起こりやすくなる。
「誤嚥は食事中にだけ起こるわけではありません。睡眠中に細菌を含んだ唾液を誤嚥する『不顕性誤嚥』もよく起こります。これが、誤嚥性肺炎につながる大きなリスクになります」
睡眠中は、自分で注意しにくいから怖い。
「食べるとむせるからといって、食事そのものを避ける患者さんもいます。食べる量が減ると、栄養不足から全身の筋肉が衰えるサルコペニアになりやすくなります。すると、飲み込むための筋力がさらに弱まるという悪循環に。こうした状態が進めば、誤嚥性肺炎だけでなく窒息の危険性も高まり、認知機能の低下にもつながりかねません」
だからこそ大切なのは、まだ普通に食べられる50代から対策を始めること。
飲み込み力の低下がわかるチェックリスト
□たんがのどによくからまる
□唾液が多いと感じる
□声の感じが変わってきた
□食事中や食後にむせるようになった
□せき払いが増えた
□寝ているときに、せきをするようになった
□飲み込むときに引っかかる感じがする
□のどが詰まった感じがする
□液体の方が固形物より飲み込みにくい
□食べ物や飲み物が鼻の奥の方に流れる
《チェックの数》
0〜1:いまのところ問題なし
2〜4:少し飲み込み力が弱くなっている
5〜7:かなり飲み込み力が弱くなっている
8〜10:すでに嚥下障害になっているかも
(出典/浦長瀬昌宏『のどを鍛えて誤嚥性肺炎を防ぐ! 嚥下トレーニング 1日5分で「飲みこみ力」に差がつく!』(メイツユニバーサルコンテンツ))
誤嚥はこうして起こる!
通常の状態では、咽頭から食道、胃と運ばれていく食べ物が、加齢などで舌やのどの筋力が弱まると、喉頭で気管に食べ物が入るのを防げなくなり、誤嚥が起こる。人は気管を通して空気を肺に送り込んでいるので、気管に異物が入ると、呼吸機能に異常をきたす。
舌とのどを一緒に鍛えて連携力アップ!飲み込む力を上げる「ごっくんトレーニング」
浦長瀬さんに飲み込む力を鍛えて誤嚥を防ぐためのトレーニング法を聞いた。舌や口、のどを大きく動かすのがポイントだ。
舌の形を変えるトレーニング
【1】舌にスプーンの背を押しつける
スプーンの背を舌の上面に押しつける。スプーンの背を押し返すように舌を動かし、舌に負荷がかかるようにする。
【2】スプーンの背で、舌の左右の側面を押す
スプーンの背を舌の左右の側面それぞれに押しつける。スプーンの背を押し返すように舌を動かし、舌に負荷がかかるようにする。
《舌の動きをセルフチェック》
舌の形をうまく変えられないと、食べ物をまとめられなくなるので、定期的に動きのチェックを。舌の裏側を見せる(A)、舌を左右から丸める動き(B)がおすすめ。
舌と喉頭を連動させるトレーニング
【1】「かー」と大きな声を出す
のどに手をあて、「かー」と大きく声を出す。喉頭が上に動くことを確認。舌の奥が上に動くと喉頭もつられて動く。
【2】「おー」と大きな声を出す
のどに手をあて、「おー」と低い声を出す。のどにあてている手で、喉頭が下がるのを感じながら行う。
【3】「ひー」と大きな声を出す
のどに手をあて、「ひー」と高い声を出す。のどにあてている手で、喉頭が上がるのを感じながら行う。
まだある!舌トレ以外でのどを鍛える方法
《水トレーニング》軽く上を向いて水を飲み込む
あえて飲み込みにくい体勢で水を飲み、飲み込む力を鍛える。指をのどにあて、軽く上を向いて、力を入れて水を飲み込む。むせないように気をつける。
《呼吸法》口を開けて大きく息を吐く呼吸法
飲み込みと呼吸のタイミングのズレはむせる原因に。鼻から息を吸い込んだら、息を止めて飲み込み、口を開けて息を吐く。1日2〜3回ゆっくり行う。
◆教えてくれた人:耳鼻咽喉科専門医・浦長瀬昌宏さん
一般社団法人嚥下トレーニング協会代表。神鋼記念病院耳鼻咽喉科科長として、鼻治療や嚥下障害の予防を中心に耳鼻咽喉科の診療を行う。主な著書に『誤嚥性肺炎は10秒の「のどトレ」でくいとめる』(PHP研究所)など多数。
取材・文/土田由佳
※女性セブン2026年10月29・11月5日号
