「気が進まない誘いを上手く断ることができない」60代女性の悩みに毒蝮三太夫が誘いに対するの心の持ちようを伝授|「マムちゃんの毒入り相談室」第86回
人づきあいは一筋縄ではいかない。年齢を重ねても、むしろ年齢を重ねるほどに、悩む場面が増えたりもする。63歳の相談者の女性は、ついイイ顔をしてしまうせいで、気が進まない誘いも断れないと訴える。上手な断わり方はないかと尋ねる相談者に、マムシさんは「そろそろ断わる喜びを知ってもいい」とアドバイス。その真意は?(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「気が進まない誘いでも断われない自分が嫌」
もうすぐ梅雨も明けて、本格的な夏の到来だ。きっとまた猛暑になるんだろうな。年寄りはとにかく熱中症に気を付けなきゃいけない。カラダのセンサーが鈍ってるんだから、暑いと感じてなくてもエアコンをつけて、ノドが乾いてなくても早めに水分を取るようにしよう。くれぐれも気をつけて、夏を乗り切ろうじゃないか。
今回は、友人の誘いを上手に断われないと悩んでいる63歳の女性からの相談だ。
「私は優柔不断というか、ついイイ顔をしてしまうことが多く、人からのお誘いを上手に断れないのが悩みです。
友人にはさまざまなグループがあり、同級生、仕事仲間、ママ友(複数のグループ)、お稽古の仲間など、これまでのお付き合いで仲良くしてもらっているのですが、そのお誘いが重なってしまうと、ひと月の外出が5回以上になることもあり、出費もバカになりません。
それぞれの人たちと会うのは楽しいのですが、お誘いが重なったりして『今回は気が進まないな』と思っても、上手に断ることができないのです。グループLINEなどのやりとりも複数のグループがあると、返信を打つ回数も多くなり、家でスマホばかり見ていて夫にイヤな顔をされます。
うまい距離の取り方、相手を不快にさせない断り方はあるでしょうか? いい年をして恥ずかしいのですが、勇気を出して質問しました」
回答:「誘いっていうのはね、『受ける喜び』と『断わる喜び』がある」
これは悩んじゃうよね。オレも昔は、こういうことがあったよ。でも、誘いが多いっていうのは、悪いことじゃない。いろんな人があなたに会いたいと思ったり、気にかけてくれたりしているわけだからね。そこは自信を持っていいよ。
オレは20年ぐらい前から、人づきあいで無理はしないようにしている。行きたくない集まりは断わるし、お中元やお歳暮もほぼやめちゃった。だからといって「マムシは付き合いが悪くなった」なんて言われないし、周りから人がいなくなったわけじゃない。大切な人とのつながりは、そう簡単には切れないよ。
あなたも60歳を超えたわけだから、まあ今の世の中で言えばまだまだ若いんだけど、そろそろ「断わること」を覚えたほうがいいね。誘いっていうのはね、「受ける喜び」と「断わる喜び」がある。誘いを受けたら、自分もほかのみんなも楽しい。断わった場合も、行かずに済んで楽ができるし、次に会うときにはほかのみんなが今まで以上に喜んでくれる。
そもそも断わったからと言って、誰もたいして気にしちゃいないよ。「あなたが来ないと寂しいわ」なんてのも、お世辞で言ってることも多いしね。行きたいと思ったときに行ったほうが、みんなと楽しく過ごせるし、結果的にいい関係が続けられるんじゃないかな。
そういえばオレも少し前に、「玉袋筋太郎の芸能生活40周年を祝う会」に招待されたんだけど、明治記念館という由緒正しい、タマには似つかわしくない会場でやるって聞いて、なんか気が進まなくて断わった。あそこはホテルと違って、アプローチが長いんだ。
そしたら、ビデオで乾杯の発声をやれって言うから、「気が進まないから欠席したけど、おめでとう。乾杯!」って挨拶を入れて送ったよ。「はい、お帰りはこちら」なんて入れてね。あとで聞いたら、大ウケだったらしい。これがいい例かどうかはわからないけど、いないことで余計に存在感を発揮して、目立っちゃったわけだ。ハハハ。
ただ、オレだから「気が進まない」と言っても許されたけど、あなたが友だちの誘いを断わるときに、さすがにそうは言えない。こういうときは嘘も方便だ。お酒の誘いなら「ドクターストップがかかった」でもいいし、ランチなら「健康診断がある」でもいい。親戚に不幸があったとか順番で年寄りを介護してるとか、もっともらしい理由をでっち上げよう。
LINEっていうのはオレにはよくわからないけど、面倒臭いらしいな。「私がスマホをいじってると、旦那がいい顔しないの」って、旦那のせいにしちゃおう。ほかのメンバーに最初にそう宣言して「マメに返信できないけど、ごめんなさいね」と言っておけばいい。それで疎遠になるような相手だったら、もともと付き合う必要なんてないってことだ。
そうやって人間関係を少しずつスリムにしていくことで、本当に大切な友だちが見えてきたりもする。気が進まない付き合いを減らすことで浮いた時間やお金は、ひとりの時間を楽しく過ごすために使ってみよう。美術館に行くとか新しい習い事をしてみるとかね。もちろん、旦那との会話を増やしたり一緒に楽しめることを探したりするのも大事だ。
限りある人生なんだから、気が進まない付き合いに振り回されてるヒマはない。自分にとって何が大切で何が必要なのか、誰とどう過ごしたいのか、人生の後半戦はそれを意識して、少しずつ荷物を下ろしていくのがいいんじゃないかな。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。90歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。最新刊は玉袋筋太郎と熱く語り合った対談集『愛し、愛され。』(KADOKAWA)。毒蝮の「毒」と玉袋の「粋」が熱く融合し、混迷の時代を生きる私たちに勇気と希望を与えてくれる。
YouTubeの「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXXも、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。