歯の少ない人は認知症になりやすい!? 歯を残す方法、セルフケア法
宮城県仙台市内の70才以上の高齢者を対象に東北大学が行った調査によれば、健康な人の歯の本数は平均14.9本であった一方で、認知症の疑いのある人は平均9.4本だったという。つまり、歯の本数が少ないほど、認知症になりやすいのだ。
歯の役割は、ものを食べるためだけではない
『介護現場で今日からはじめる口腔ケア』(メディカ出版)著者で歯科衛生士の山田あつみさんが解説する。
「歯はものを食べるためだけでなく、しっかりした姿勢を保って歩いたり、しゃべったりするためにも大きな役割を果たしています。実際に、寝たきりでしゃべることもままならなかった80代のおばあちゃんが、入れ歯を作ったことで歩けるようになったり好物だったお寿司が食べられるようになった例もあります。しっかりかむために奥歯をぐっとかみしめることはいい姿勢を保ったり、転倒を防止したりする効果もあるのです」
正しい歯の磨くことが歯の本数を減らさない最大のケア
歯の本数を減らさないための最大のケアは“正しく磨くこと”だ。
「コツは、歯に直角にブラシをあてて磨くことに加え、歯と歯茎の間も意識して磨くこと。柔らかい毛先のブラシを45度の角度に傾け、歯と歯茎の間に直接あてて優しく振動させてください。直角に磨くだけでは見落としてしまう『歯周ポケット』の汚れを取ることができます」(山田さん)
歯ブラシは2週間に1回くらい取り替えた方がいいという。
「口腔内は約37度の熱があり、ナイロンでできた歯ブラシの毛は熱に弱く、劣化しやすい。また、歯茎に刺激を与えすぎないよう、ヘッドが小さく、毛は“柔らかめ”のものを選んでください」(山田さん)
歯の磨き方ポイント
●歯に直角にブラシを当てる
●歯と歯茎の間は、柔らかい毛先のブラシを45度に傾け、優しく振動させる
●歯ブラシは2週間に1回取り替える
唾液を増やす唾液腺マッサージ
年を重ねると、歯の本数とともに唾液の量も減っていく。
「歯が丈夫で食べ物を咀嚼できても充分な唾液の量がなければ上手に飲み込むことができません。意識して飲む水の量を増やしたり唾液の量を増やす工夫をする必要が出てきます」(山田さん)
山田さんは唾液の量を増やす方法として「唾液腺マッサージ」を推奨する(下図参照)。
「唾液腺は、耳の後ろから頰にかけての耳下腺、あごの内側にある顎下腺、あごの下にある舌下腺の3か所にあります。この3点をマッサージすることで、唾液の分泌量が増えるのです。耳下腺のマッサージは、耳の下から顔の前に向かって、指3~4本で耳の下を押さえ指の腹全体を使ってくるくると円を描くように行ってください」(山田さん)
顎下腺マッサージは両手の4本の指を使って行う。
「あごの骨の内側に両手の4本指をあてて、耳の下からあごの先まで押します。あまり強く押さないでください。これも同様に5~10回繰り返します」(山田さん)
舌下腺のマッサージは、指を組んで行うのがいい。
「指を組んで、あごの下の先端のとがった部分に親指をあて、親指を差し込むようにグッと上に向かって押します。舌の付け根あたりにある舌下腺を刺激したいので、下あごから押し上げるイメージで、5~10回繰り返します」(山田さん)
唾液が減ると、飲み込みが困難になるだけでなく虫歯や歯周病のリスクを高め、入れ歯も外れやすくなるという。早く取り入れるに越したことはない。
※女性セブン2019年4月25日号