「病院の送迎に困った…」気になる《介護タクシー》の活用方法や素朴な疑問Q&A【専門家解説】
高齢の親の通院や外出時の移動手段として気になるのが「介護タクシー」だ。R60記者は現在、車いすを利用している90代の母の通院や移動にはタクシーを利用しているが、毎回だと費用もそれなりにかかるのが悩み。そこで介護タクシー事業を運営する専門家に、上手な活用方法を教えてもらった。
教えてくれた人/井口千賀子さん
介護福祉士、認知症ケア専門士。特別養護老人ホームやグループホームなどでユニットリーダーとして長年勤務。施設の利用者から「たまにはお出かけしたい」「お墓参りがしたい」などの声を多く聞き、2023年に介護タクシーと訪問介護サービス事業を展開する事業所『羅心盤』を起業。利用者や家族に寄り添ったサポートを続けている。https://rashinban-konpasu.com
高齢の親の送迎に「介護タクシー」は使える?
介護が必要な高齢の親の移動手段として、自家用車かタクシーか。タクシー代はそれなりに高くつくし、ペーパードライバーの記者は車の運転に自信がない…。車いすのまま移乗できる福祉車両を利用した「介護タクシー」はどうだろうか? 介護タクシー事業を運営する井口千賀子さんに、利用方法などの基本を教えてもらった。
Q.そもそも「介護タクシー」とは?
A.有資格者が福祉車両を使い移動をサポートするサービス
「介護タクシーは、車いすやストレッチャーのまま乗ることができる福祉車両を活用しているケースが主流です。制度上の決まりがあるわけではないのですが、一般的に介護タクシーを名乗っている事業者では、運転手が介護職員初任者研修以上の資格を持っていて、利用者の乗降や移動の介助も行うケースが主流です」(井口さん、以下同)
Q.福祉タクシーとは別のもの?
A.同じものを指すことが多い。事業者により名称は異なる
「いろいろな名称があって、みなさんは混乱してしまいますよね。厳密なルールはないのですが、介護タクシーは法律で定められた正式名称ではなく、福祉タクシーと呼ぶ場合もあります。
一般的には、ドライバーが初任者研修以上の資格を持っているケースが多く、介助も行えるサービスを提供する事業者が『介護タクシー』を名乗っている場合が多いと思います」
なお、介護タクシー事業を始めるには、一般的なタクシー事業者と同様に「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」として許可を受ける必要がある。
Q.ドライバーは介護福祉士なの?
A.資格を持つドライバーだと安心
国交省が定める定義によると、介護タクシーのドライバーは福祉車両の場合、初任者研修以上の資格があり普通二種免許などの要件を満たすことが「努力義務」となっている。
「資格を持っていないドライバーさんの場合、介護福祉士や看護師さんが同乗するケースもあり、人件費が別途かかるケースもあります。
最近では、ドライバーさんが介護の資格をもっているパターンが増えてきていると思いますよ。我が社の場合は、介護福祉士の資格をもつ私が運転も介助も兼ねていますので、安心して利用いただけると思いますし、運転と乗降介助を行い、必要に応じて通院先での手続き補助も提供しています。
介護タクシーは、高齢者や障害者の外出を安全かつ快適にサポートする重要なサービスなので、ドライバーが初任者研修以上の有資格者がどうか、介護福祉士や看護師などが同乗するのか、利用時に確認しておくとよいですよ」
Q.どのように手配・依頼するの?
A.さまざまな依頼手段がある
「入院中などの場合には、病院が提携する事業者に手配することもありますし、在宅介護の場合、介護保険を利用する場合には、ケアマネさんを通じて依頼します(後述)。
自費で依頼する場合は、介護タクシーを提供している事業者に連絡してみてください。探せないときは地域の病院や高齢者施設で聞いてみるのもいいでしょう」
Q.介護保険で利用するには?
A. まずはケアマネジャーに相談を
「介護タクシーによる『通院乗降等介助』は訪問介護のひとつで、介護保険の対象となります。要介護1以上のかたが対象で、ケアマネジャーが作成するケアプランに『定期的通院』として組み込むことで利用できます。利用については、ケアマネにご相談してみてください」
Q.「通院等乗降介助」とは具体的にどんなサービスのこと?
A.乗降介助を中心としたサポ-ト
「介護保険の『通院等乗降介助』に含まれる範囲は原則、建物の入口までという決まりがあります」。詳細は以下の通り。
・乗車・降車介助
・乗車前・降車後の移動介助(屋内外)
・自宅玄関から車への移動
・車から病院の玄関(入口)までの移動
・玄関先までの誘導・見守り
このように、運転だけでは算定不可となり、必ず介助がセットとなる。
「介護保険外の介助サービスは、事業者や状況によって対応できる範囲は変わると思います。基本的に病院内での会計や薬をもらうなどの代行や介助は介護保険外で、自費となります。
また、運賃・車いす・ストレッチャー、待機料なども保険対象外となります。利用目的は通院や役所手続き、必要な買い物などに限定されます」
Q.料金はどのくらいかかるの?
A.介護保険利用の有無と走行距離で変わる
「介護保険が適用になるのは、乗り降り介助・移動介助・受付などの手続き、介助など。運賃は自費となります。一般のタクシーのようにメーターがあり、料金は移動距離で決まります」
・保険外の例
「弊社の場合、自費の介護タクシーの初乗りは1.2kmまで600円。231mごとに100円が加算され、メーターによって移動料金が決まります(渋滞時間も加算されます)。なお、介助料金は1000円いただいています」
・介護保険の利用例
「弊社の場合、通院等乗降介助の初乗りは、1.3kmまで570円。以降は、300mごとに100円で、距離に応じた定額運賃となります。また、介助料金は介護保険の適用(1割~3割負担)となり、自宅の室内介助は20分まで可能としています」
介護タクシーの利用料は事業所によってかなりバラツキがあります。介護保険適用外の事業者は、事業者によって料金が設定できるので、サービス内容やスタッフの対応力を見極めることが大切かもしれませんね」
なお、自治体によっては助成制度がある場合もあるので、お住まいの自治体の制度を調べてみるとよいだろう。
Q.家族は同乗していいの?
A.要介護者に介助が必要ときは家族も同乗を
「介護保険利用の場合、原則として要介護者が介助を必要とする場合に限り、ご家族様の同乗が認められています。
とはいえ、ご家族様も一緒に病院に行き、診察内容を聞いたり支払いをしたりと、サポートを希望されることは多いですよね。なので弊社では、ご要望があれば介助が必要ないかたのご家族様に同乗いただくことはありますが、こうした対応は、事業所によって異なると思います。
なお、自費の場合は、介助を必要としないかたでもご家族の同乗は可能です」
Q.介護保険を申請していない人も使える?
A.事業者によって対応が異なるが、利用可能なことは多い
「介護タクシーの事業者によって対応は異なりますが、弊社の場合はドライバーであり介助者の私のスケジュールが空いていれば、ご対応する場合もあります。
全額自費扱いとはなりますが、『急に病院に行かなくてはならない』など、どうしもタクシーが予約できないなどのときにご依頼いただくこともあります」
車いす利用者や要介護者ではなくても、高齢者は移動や通院での作業が負担になることも。近年、アプリでも流しでも、タクシー自体がつかまらないという声も多く聞くので、相談してみる手はあるだろう。
Q.施設の送迎(一時帰宅)なども頼める?
A.まずは施設へ確認を
「施設によって専用車両を保有している場合もあるので、施設に問い合わせをしてみてください。デイサービスなど送迎専用の場合には、基本的には利用者の送迎のみとなります。それ以外の外出や帰宅には使えないケースもあります。そうした場合には、介護タクシーを利用されることが多いと思います」
※介護タクシーや福祉タクシーの呼称、サービス内容、利用条件は都道府県や自治体、事業者によって異なる場合があります。利用を検討する際は、お住まいの自治体や事業者にご確認ください。
取材・文/本上夕貴
