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兄がボケました~認知症と介護と老後と「第93回 感染が気になる季節になりました」

 ライターのツガエマナミコさんが、認知症の兄の介護や日々のあれこれを綴るエッセイ。今回は、AIの進歩に驚きつつ、面会に行った兄へおやつ介助をし、デジタルとアナログどちらにおいても考えさせられた日常生活を明かしてくれました。

 * * *

音声が文字で記録される⁉

 インタビュー取材だというのにレコーダーを忘れてしまい、電車の中で気づいたときには冷や汗ものでございました。しかし、近頃のスマホは優秀でございます。録音ぐらいできるはず。でもわたくしは生涯で一度も使ったことがなく、そんなアプリを入れた記憶もございません。

 現地に着いて、カメラマンさまにその旨をご相談すると、「できるできる」とおっしゃって、あとはスタートボタンを押すだけの状態にしてくださいました。

 はじめてのスマホ録音。わたくしがあまりに頼りないものですから、カメラマンさまも自分のスマホを並べて記録してくださって、取材終了後すぐにデータを送ってくださいました。

 それがなんと、音声ではなく文字データ!

 噂には聞いておりましたが、話している内容が文字で記録されている現実を目の当たりにして「そりゃライターなんて要らなくなるわな」と思いました。

 しかしながら、しゃべり言葉は文字にすると意味不明な部分が多く、どっちがしゃべっているのかもわからないごちゃまぜ状態。一問一答形式ではなかったので、さすがのAIもこれではまともな原稿にはできないだろうと感じました。

 帰宅後、自分のスマホの録音を再生するときには、余計なところに触れて録音が消去しないように…と少なからず緊張いたしました。おかげさまで無事に再生でき、さきほど原稿も書き終え、「もういつレコーダーを忘れても安心だ」と命綱を手に入れたような気分になっております。

 ただ、悩んでいるのはその録音データをPCに送る方法や、消去する方法がわからないこと。1つできることが増えた結果、2つわからないことが増えました(笑)

 今週も兄の面会に行ってまいりました。

 行くのはいつも、ほぼおやつの時間帯なので、おやつ介助はわたくしの役目となって参りました。スタッフさまのご負担を減らすためにも、わたくしができる数少ない介護を任せていただけることに喜びを感じております。

 昨日は、小ぶりのモンブランケーキととろみのついたお紅茶と栄養が入っているというトロッとしたババロアのようなものでした。これだけ食べれば結構お腹いっぱいだろうと思う量でございます。

 ご注意を受けたのは、モンブランケーキの上に乗ったひと欠片の栗のこと。スタッフさま曰く「この栗はちょっと食べきれないかもしれません」とのことでございました。お昼に食べたあずき粥のあずきがずっと口の中に残っていたそうです。「では、栗はわたくしがいただきます」とスタッフさまの了解を得て、最後に美味しくいただきました。思ったよりも柔らかかったので、これが食べられないのか…と兄が可哀そうになりました。

 ほぼ1時間かけたおやつタイム。大袈裟ですけれど、ひと口ひと口が兄の命だな~と思うのでどんなに時間がかかっても食べてくれると嬉しいのでございます。

 一昨日、またてんかんの短い発作があったと聞きました。大事には至っておりませんが、やはりお薬調整の必要性はあると思っております。

 ところが、先週、落ち着いたはずの病院問題が二転三転しまして、現状では「往診医が変わってから新しい先生と相談して考えましょう」という話になりました。看護師さまもどこの病院にかかるのが一番いいのわからなくなっているようでございました。

 なにかを決断するとき、最短距離でたどり着きたいと思ってしまいますが、プロでも回り道することがあるのだと思えば、わたくしごときが最短距離を選べなくても当たり前だと思えて少し安心いたしました。

 そして今日、施設からの電話で「施設内で感染症が発生しました」と連絡がございました。兄は感染していないそうですが、しばらくは感染対策のため面会禁止とのこと。

 すこし涼しくなって面会者の数が増えたことは下駄箱の埋まり具合を見て感じておりました。施設内ではマスクが当たり前ですが、病院ほど厳重ではないですし、世間的には以前ほどマスクへの意識がなくなっているので、「やっぱり発生しちゃったか」という印象でございます。

 どのくらいで収束するのかわかりません。早く面会が解禁になるのを祈るばかりでございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

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