注目《介護タクシー》介護が必要な高齢者の移動手段として高まるニーズ「家族の思い出作りにも」
高齢者や介護を必要とする人の移動手段として、介護タクシー事業が活況だ。国土交通省によると福祉タクシー*は2023年に5万台を超え、その後9万台を導入する目標が掲げられている。そんな今注目の「介護タクシー」事業に参入した専門家に話を伺った。
*介護タクシーは福祉タクシーやUD(ユニーバーサルデザイン)タクシーなどさまざまな呼称がある。
教えてくれた人/井口千賀子さん
介護福祉士、認知症ケア専門士。特別養護老人ホームやグループホームなどでユニットリーダーとして長年勤務。施設の利用者から「たまにはお出かけしたい」「お墓参りがしたい」などの声を多く聞き、2023年に介護タクシーと訪問介護サービス事業を展開する事業所『羅心盤』を起業。利用者や家族に寄り添ったサポートを続けている。https://rashinban-konpasu.com
介護タクシー事業に参入した理由
「介護タクシー事業を始めたところ、思っていた以上に反響があってとても驚きました。乗車されるかたやご家族を安心して目的地までお届けすることはもちろん、道中の景色や風景、会話も楽しんでいただきたい。単なる移動手段にとどまらないサービスを提供したいと考えています」
こう語るのは、介護福祉士の井口千賀子さんだ。介護施設管理者など長年の経験をいかし、2023年に起業し、介護タクシー事業をスタート。
介護タクシーは、車いすやストレッチャーのまま乗ることができる福祉車両を活用するケースが多く、高齢者や介護が必要な人の移動手段として2000年代からその台数は右肩上がりに増えている。
「前の職場で定年が近づいてきた頃、今後どう介護職と向き合うかを考えていました。そこで、一念発起。以前からやりたいと思っていた介護タクシー事業を始めることにしました。どうせやるならと欲が出て、訪問介護サービスも同時に始めました。
『慣れ親しんだ町で老後を過ごしたい、要介護になっても家で過ごしたい』と言った声を、地域のかたから多く聞いていました。
私自身も65才で介護保険証を受け取った時に、たとえ要介護となっても自宅で過ごしたい。そんなときに外出を支援する介護タクシーは地域の高齢者の移動手段として欠かせないものになっていくと思います」(井口さん、以下同)
地域の移動手段として高まるニーズ
熱い思いを胸に介護タクシー事業を始めた井口さんだが、そのニーズの高さに改めて驚いているという。
「おかげさまで、地域のご家族・利用者様に喜んで活用いただいています。
介護タクシーは、要介護認定を受けケアプランに組み込むことで、介護保険で利用することができます。通院に活用されるケースが多いのですが、介護保険を使わないケース、自費でご家族と一緒に外出したいというご依頼も一定数あります。
昨年は、施設で暮らしている80代女性のご家族から、『春に桜を見に行きたい』とのご依頼がありました。ご入居されていた施設に車いす対応の福祉車両でお迎えに上がり、地元の桜がきれいなドライブコースにお連れしました。
ご本人様もご家族も『とてもいい思い出になった』と喜ばれていました。そのかたは秋に他界されたのですが、ご本人の思いを叶えるお手伝いができたのかなと。介護タクシーをやっていてよかったと感じました」
介護タクシーを安心の移動手段に
地域で介護タクシーの利用者や家族との交流が広がる一方で、気がかりなこともあるという。
「100才のお祝いでホテルに行きたいとのことで、料金のお見積りをお出ししたのですが、自分たちで移動させた方が安いからと、お断りされてしまったことがありました。
後から伺ったのですが、ご家族が所有する車で移動された際、お父様が骨折してしまい、入院されたそうです。年齢のことやお身体の状況を考えると、移動中の負担もあったかもしれません。たとえ少し高くても、安心してご移動いただける手段として、介護タクシーを選んでくれていたら…と」
介護タクシーを活用したくても費用の面で折り合わないケースもあるようだ。
介護タクシーの料金設定はさまざま
「介護認定を受けている場合、『通院等乗降介助』に関しては、要介護度1以上のかたから保険対象となります。我が社の場合は、1割負担だと片道約120円です。そこに距離に応じた運賃と、介助などのサポート料金が追加されます。
介護保険では、通院等乗降(介助)に関する料金は規定がありますが、その他のサービス料に関しては、事業者ごとに異なり、料金体系に決まりがないのが実情です。
我が社の場合、サポ-ト料金は1000円に設定していますが、ほかの事業者だともっと高額に設定しているところもあります。
以前、知り合いのケアマネさんから、『階段一段ごとにいくら上がりますか?』と聞かれたことがあって驚きました。車を降りて車いすの介助をお願いすると、一段ごとに500円の追加利用金が発生するというので驚いたことがあります」
自費の場合は必ず「見積もり」を
自費で頼む場合は、どこまで行って帰って、何の目的でということを最初に伝えて、事前に必ず見積もりをとりましょう。
介護が必要なかたや高齢のかたを安全・安心して移動いただくためにも、信頼できる介護タクシーを頼って欲しいと思います。ご家族が全部をしょいこまなくていいと思っています。プロに任せるところは任せて、その分ご自分の用事や仕事に時間と労力を使っていただきたいですね。
そして、付き添えるときは介護タクシーに同乗し、楽しくおしゃべりなどして、ご家族にしかできないことをしてあげてください」
※介護タクシーや福祉タクシーの呼称、サービス内容、利用条件は都道府県や自治体、事業者によって異なる場合があります。利用を検討する際は、お住まいの自治体や事業者にご確認ください。
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取材・文/本上夕貴
