介護施設訪問レポート｜住空間のデザインにこだわり抜いている介護付有料老人ホーム＜前編＞

　高齢者向けの住宅の中から、話題の施設をピックアップ。記者が訪問し、施設で働く人の思い、設備、サービスなどをレポートする。今回は、神奈川県横須賀市にある介護付有料老人ホーム「ラ・ナシカ　よこすか弐番館」だ。

ラ・ナシカ　よこすか弐番館

　介護付有料老人ホームやデイサービス、グループホームなどの介護サービスを全国103か所で展開している株式会社シダー。上場企業のシダーが京急久里浜線「新大津」駅から徒歩3分のところにオープンしたのが介護付有料老人ホーム「ラ・ナシカ　よこすか弐番館」だ。

自分が住みたいと思うかどうか！こだわりの外観

　2016年から運営を始めた「ラ・ナシカ　よこすか弐番館」のこだわりは住空間のデザイン。和モダンを意識したというその外観は、高齢者向けの施設では使われることが少ない黒を使い、入り口には瓦も使われている。

「まず建物の形や色など外観を決めて、『昭和モダン』などテーマを設定します。そしてそのテーマにあった壁紙や床材などを一つひとつ選んでいきます。老人ホームを作っているという感覚ではないですね。自分がどういうところだったら住みたいかを考え、細かい所まで意識して造るようにしています」（株式会社シダー関東本部企画室室長の早川千絵さん）

階によって違う介護施設のエレベーターの扉 — エレベーターの扉のデザインも階によって変えるほどのこだわりぶり

　土地の選定から始まり、外観のデザインや内装、調度品に至るまで、建設会社やデザイン会社に全てを任せるのではなく、できるだけ自分たちで考えているという。その中心として活躍している早川さんにこだわりポイントを聞いてみた。

「自分だったら毎日過ごす居室は明るい方がいいという考えのもと、居室をなるべく北向きに配置しないように気を遣っています。流しの水受けに信楽焼を使ったり、階ごとに壁紙のデザインを変え、入居者様が楽しめるように色を変えたりしています」（早川さん）

　居室は全て個室で、自分の好みに合わせてアレンジすることができるという。どの部屋も日当たりがよく、明るい気持ちで過ごせそうだ。

　カラオケや映画を楽しめる専用の部屋や広々とした理美容室など共用部も充実。家族や入居者の同士の交流に活用されているという。

　ブラインドの色や材質、理美容室のチェアに至るまで、入居者の生活環境に配慮して選んでいるので、居室以外のスペースも居心地が良い空間に仕上がっている。

階によってブラインドの色を変えている — 障子のような雰囲気のブラインドの色も階によって変えている

器にもこだわった食事は毎回の食事量を記録

　こだわっているのは建物だけではない。日々の楽しみであり、健康を保つために重要な役割を果たしている食事にもこだわりがいっぱい。

　この日のメニューは、ご飯に味噌汁、鶏の照焼き、蓮根のきんぴら、小松菜の辛子和え。食欲の出る彩りに、しっかりとした味付け。もちろん日替わりメニューで、好みやアレルギー、身体の状態に合わせたやわらかさなど、個別に対応してくれるという。

「食欲が増すように、食事の見た目にも気を遣っています。美濃焼のコーヒーカップや陶器など、私達が日常使うようなもので召し上がって頂いています。味付けも『高齢者だから』ということにこだわらず、私たちも食べておいしいと感じるものをお出しするようにしています。もちろん、塩分や糖分などの制限や硬さ、刻み方は一人ひとりに合わせていて、入居者様のご意見を取り入れるようにしています。食材にもこだわり、新潟産のコシヒカリを使っています」（ラ・ナシカ　よこすか弐番館施設長の湯川圭祐さん）

　湯川さんによると、食事の様子から入居者の健康管理のための情報を数多く得られるという。ここでは、入居者が食べた量を毎食記録し、健康管理に役立てているそうだ。主菜を何割、副菜を何割食べたかを記録し、食欲が落ちている場合は医師と相談の上、カロリーの高い飲み物を補食として用意する。また、問題なく飲み込めているかを職員が確認し、食事のやわらかさを調整しているという。

調度品もこだわった共用部 — 食堂のカーテンや照明、椅子の一つひとつにこだわりが

　いかがだっただろうか。「自分や家族が住むならば」という視点で作られている「ラ・ナシカ　よこすか弐番館」。建物や食事への徹底したこだわりへの評価が、その高い入居率に表れているのだろう。

撮影／津野貴生　取材・文／ヤムラコウジ

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【データ】
施設名：「ラ・ナシカ　よこすか弐番館」
公式WEBサイト：http://www.cedar-web.com/facility/2874/
所在地：神奈川県横須賀市根岸町1-1-12
最寄駅：京急久里浜線「新大津」駅から徒歩3分
類型：介護付有料老人ホーム
事業主体：株式会社シダー
敷地面積：2,118.13平方メートル
延床面積：2,343.72平方メートル
室数：60室
入居要件：要支援・要介護
構造：鉄骨造、地上3階建
開設年月日：2016年10月1日
料金：入居時費用＋月額利用料
Aコース：入居時費用46万円（内訳・敷金10万円、前受家賃6000円×60ヶ月分＋月額利用料21万2400円（内訳・家賃8万1000円、管理費6万2700円、水光熱費1万3200円、食費5万5500円）
Bコース：入居時費用190万円（内訳・敷金10万円、前受家賃3万円×60ヶ月分＋月額利用料18万8400円（内訳・家賃5万7000円、管理費6万2700円、水光熱費1万3200円、食費5万5500円）
Cコース：入居時費用370万円（内訳・敷金10万円、前受家賃6万円×60ヶ月分）＋月額利用料15万8400円（内訳・家賃2万7000円、管理費6万2700円、水光熱費1万3200円、食費5万5500円）